生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

実需者と生産者の期待に応える高品質で安定多収な小豆品種の開発

年度2019ステージ開発研究分野農業 (畑作物)適応地域北海道

キーワードアズキ、品種育成、耐病・耐冷性、安定多収、高品質

課題番号 26095C
研究グループ 北海道立総合研究機構, 株式会社虎屋, 北海道
研究総括者 北海道立総合研究機構十勝農業試験場 冨田 謙一 (平成30年4月~), 佐藤 仁 (~平成30年3月)
研究タイプ 育種対応型 Bタイプ
研究期間 平成26年~30年 (5年間)
PDF版 実需者と生産者の期待に応える高品質で安定多収な小豆品種の開発 (297.0 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

実需者が求める加工適性を有し、冷害や土壌病害などの障害への耐性に優れた品種を早期に開発・普及することで、道産小豆の生産量の安定化を図り、輸入品に左右されない安定した供給体制を整えることを目的とする。このため、実需者のニーズに合った加工適性を有し、安定した価格と供給を可能とする1道東向け高品質で耐冷性・耐病性に優れた小豆品種の開発、2道央・道南向け高品質で耐病性に優れた多収小豆品種の開発、3速やかな品種普及のためのマニュアル作成、を達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 道東向けとして、 「サホロショウズ」並の早生で、落葉病レース1および茎疫病レース1・3・4抵抗性、「エリモショウズ」並の耐冷性を有し、「きたろまん」並以上の加工適性を有する新品種「ちはやひめ」を開発した。
  • 道東・道央向けとして、実需者からの品質評価が高い中生の基幹品種「エリモショウズ」に落葉病レース1抵抗性を導入し、病害抵抗性以外は「エリモショウズ」と同等な新品種「エリモ167」を開発した。
  • 道央向けとして、「しゅまり」並の熟期で、落葉病レース1・2、茎疫病レース1・3・4および萎凋病に抵抗性を有し、加工適性はやや異なるものの、対照品種「しゅまり」より多収の有望系統「十育170号」を育成した。
  • 開発した品種について、普及見込地帯における栽培特性を踏まえた栽培マニュアル作成した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録出願31408 小豆品種「ちはやひめ」を品種登録出願 (H28年8月) (出願者名 : 北海道立総合研究機構)
  • 品種登録出願31960 小豆品種「エリモ167」を品種登録出願 (H29年3月) (出願者名 : 北海道立総合研究機構)

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 平成28年に品種登録出願公表された「ちはやひめ」は、平成29年度に原原種圃5aを設置し、60kgの原種圃用の種子を得た。また、平成29~30年度に全道で展示・試作栽培が行われた。
  • 平成29年に品種登録出願公表された「エリモ167」は、平成29年度から原原種、原種、採種生産が計画的に行われており、平成30年度全道で350~400haの展示・試作・一般栽培が行われた。
  • 「十育170号」等有望系統は、平成31年度開始の新規課題 (イノベーション創出強化研究推進事業) において、実需者・生産者のニーズに応える品種開発に向け試験を継続実施中である。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、「ちはやひめ」で数十ha、「エリモ167」で2,200haの一般栽培を見込む。
  • 5年後 (2023年度) は、「ちはやひめ」で100ha、「エリモ167」で5,500haの一般栽培を見込む。
  • 最終的には、「ちはやひめ」で1,500ha、「エリモ167」で11,000haの普及を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 新品種が計12,500ha栽培され、障害耐性の改良により10%の単収が向上し、年間3,000t増産されると、平均販売価格を24,000円/60kgとした場合、年間12.3億円の経済効果が見込まれる。また、増産により道産小豆を利用する全国の和菓子業者に安定供給をもたらし、さらなる経済効果が期待される。
  • 国産小豆の9割以上を担う道産小豆の安定供給が継続されることで、伝統ある日本各地の和菓子文化を維持し、後世に伝承していくことが可能となる。

実需者と生産者の期待に応える高品質で安定多収な小豆品種の開発

問い合わせ先 : 道総研十勝農業試験場小豆菜豆グループ TEL 0155-62-9808