生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

アミロペクチン短鎖化でおいしさが持続する画期的な業務・加工向け多収水稲品種の開発

年度2019ステージ開発研究分野農業 (水稲)適応地域全国

キーワード水稲、品種育成、米粉、デンプン特性、製パン・製菓適性

課題番号 26096C
研究グループ 愛知県農業総合試験場, 農研機構 (次世代作物開発研究センター, 北海道農業研究センター), 名古屋大学, 福岡県農林業総合試験場, あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター
研究総括者 愛知県農業総合試験場 加藤 恭宏
研究タイプ 育種対応型 Aタイプ
研究期間 平成26年~30年 (5年間)
PDF版 アミロペクチン短鎖化でおいしさが持続する画期的な業務・加工向け多収水稲品種の開発 (428.5 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

アミロペクチン側鎖が短く、糊化デンプンの硬化が遅い特長を持ち、これまでの既存品種にない「柔らかさ・おいしさが持続する」多収品種を開発する。 「旱不知 D」由来のSbe1欠損性を持ち、アミロペクチンが短鎖化した多収のうるち米2品種及びもち米1品種を実需者や生産者の評価を基に開発すること、及び関東、東海、九州地域における栽培試験結果から、気象条件とデンプン特性の関係、多収性を発揮できる肥培管理を含めた各品種の栽培マニュアルを作成することを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 多収でパンや餅の柔らかさ・おいしさが持続するもち米新品種「愛知糯126号」を品種登録出願した。
  • おにぎりや米粉加工食品の柔らかさ・おいしさが持続するうるち米系統「愛知132号」(早生) と「関東287号」(中生) を開発した。
  • 「愛知糯126号」と「関東287号」の栽培マニュアルを作成した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録出願32953 水稲品種「愛知糯126号」を品種登録出願 (H30年3月) (愛知県、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)
  • デンプン枝付け酵素1 の活性を欠き,餅硬化性が低い水稲糯品種「愛知糯126号」の育成.育種学研究 21: 28-34 (2019)

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 30年に「愛知糯126号」を品種登録出願 (30年9月出願公表) し、種苗会社が種子の生産販売を行った。
  • 製パン会社が32年から「愛知糯126号」の米粉を使用した米粉入りパンを製造する計画があり、愛知県で31年から2haの栽培を開始している。また、他県でも3ha程度の栽培が行われている。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、製パン業者や和菓子製造業者へ米粉が供給される。
  • 5年後 (2023年度) は、米粉で800トン、10年後には5,000トンの需要が期待される。
  • 災害食や輸出の分野での活用も期待され、短鎖アミロペクチン米の利用拡大につなげる。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • もち米の新規需要分について、実需業者の米粉買い取り価格を600円/kgとすると、製パン業者、和菓子製造業者の需要を5年後米粉で800トンとして4.8億円、また、10年後には5,000トン30億円の経済効果が期待できる。
  • 柔らかさ保持に特長ある商品を開発でき、また、加工時間が短くなるなど、製造コストの低減につなげられる。おいしさが持続する米加工食品を提供することが可能となり、国民の食生活が豊かになることが期待される。

アミロペクチン短鎖化でおいしさが持続する画期的な業務・加工向け多収水稲品種の開発

問い合わせ先 : 愛知県農業総合試験場山間農業研究所 TEL 0565-82-2029