生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

品質・収量の高位安定化が可能なビール醸造用大麦品種の開発

年度2019ステージ開発研究分野農業 (畑作物)適応地域全国

キーワード二条大麦、品種育成、リポキシゲナーゼ活性、ビール醸造、オオムギ縞萎縮病

課題番号 26105C
研究グループ 栃木県県農業試験場, 福岡県農林業総合試験場, サッポロビール株式会社, アサヒビール株式会社, 栃木県経営技術課, 農研機構 次世代作物開発研究センター, キリン株式会社, サントリーモルティング株式会社, 全国農業協同組合連合会栃木県本部
研究総括者 栃木県県農業試験場 加藤 常夫
研究タイプ 育種対応型 Aタイプ
研究期間 平成26年~30年 (5年間)
PDF版 品質・収量の高位安定化が可能なビール醸造用大麦品種の開発 (347.2 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

「サチホゴールデン」並のオオムギ縞萎縮病抵抗性及び多収性を持ち、ビール香味安定性に優れる低リポキシゲナーゼ (LOX) 特性を備えた品種を育成して普及させると共に、国内全てのオオムギ縞萎縮ウイルス系統に抵抗性を有し、「サチホゴールデン」以上に多収で、被害粒の発生が少ない暖地向けビール大麦系統を開発する。また、低LOX特性と国内全てのオオムギ縞萎縮ウイルス抵抗性を付与した「サチホゴールデン」同質系統「スーパーサチホゴールデン」(仮称) を開発する。

2 研究の主要な成果

  • 「サチホゴールデン」に低LOX特性を導入した準同質遺伝子系統「ニューサチホゴールデン」を育成すると共に、高品質安定多収栽培法を確立して「栽培マニュアル」を3,600部作成・配付し、普及活動に役立てた。
  • 被害粒の発生が少なく、国内全てのオオムギ縞萎縮ウイルス系統に抵抗性を有する「はるさやか」を育成すると共に、高品質安定多収栽培法を確立して「栽培リーフレット」を作成し、普及活動に役立てた。
  • 低LOX特性がビールの香味安定などに大きく貢献することを明らかにした。
  • 「スーパーサチホゴールデン」候補の4系統をゲノムワイドマーカー評価等により選抜した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録出願29510 二条大麦「ニューサチホゴールデン」を出願 (H26年9月) (出願者名 : 栃木県)
  • 品種登録出願32979 二条大麦「はるさやか」を出願 (H30年3月) (出願者名 : 福岡県)
  • Oozeki, M. et al. The two-row malting barley cultivar'New Sachiho Golden'with null lipoxygenase-1 improves flavor stability in beer and was developed by marker-assisted selection Breeding Science 67(2), 165-171 (2017).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 「ニューサチホゴールデン」の作付面積が平成30年播きで7,880 haに普及拡大した。今後は栃木県以外の採用をビール大麦合同比較試験を通して支援し、「サチホゴールデン」からの切り替えを促す。
  • 「はるさやか」は平成30年播きで48ha作付けされた。今後は福岡県での普及拡大をビール会社による現場製麦・醸造試験のための試作栽培を通して支援すると共に、西日本 (暖地) 生産県での採用を支援する。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、「ニューサチホゴールデン」と「はるさやか」の普及面積を合計10,000haとする。
  • 5年後 (2023年度) は、両品種の長所を維持しつつ気象変動に強い生産安定型の多収品種を開発する。
  • 最終的には、今後開発する気象変動に強い新品種に切り替える (普及面積10,000ha)。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 消費者や実需者のニーズに対応した高品質なビール原料を供給することにより、国産原料の地位向上に繋がり、需要拡大への貢献が期待される。
  • 耐病性品種の普及・拡大により、約16億円/年の経済効果が期待され、農家の所得向上と、我が国農業の持続的発展に貢献する。

品質・収量の高位安定化が可能なビール醸造用大麦品種の開発

問い合わせ先 : 栃木県農業試験場 TEL 028-655-1241