年度2019ステージ開発研究分野林業・林産 (きのこ)適応地域全国
キーワード原木シイタケ、ブランド化、広葉樹林循環利用、DNAマーカー、食味特性
課題番号 | 26109C |
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研究グループ | (一財) 日本きのこセンター |
研究総括者 | (一財) 日本きのこセンター 寺島 和寿 |
研究タイプ | 育種対応型 Bタイプ |
研究期間 | 平成26年~30年 (5年間) |
PDF版 | 美味・厚肉で収穫期間が長くブランド力のある原木シイタケ品種の開発 (578.5 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
極厚肉・良食味を特徴とする原木栽培用シイタケ品種・菌興115号のブランド化販売が進められている。本品種は低温要求性が強い (低中温型) ため、年内の収穫量が少ないこと、ブランド規格に適合する大型のきのこの割合が低いこと、成長温度が高いと菌柄が徒長しやすいこと等の問題点が指摘されている。本研究では、菌興115号をベースに、これらの欠点を排除したブランド力の強い新品種 (菌興115号比、乾重収量 : 10%向上、平均1個乾重 : 20%増、秋率 : プラス10%) を開発する。
2 研究の主要な成果
- 菌興115号よりも優れた収量性 (乾重収量、1個乾重、秋率) を示した最有望株13-K12、有望株11-C299、13-K190、13-S134、12-T31、13-A187を選定した。
- 最有望株および有望株の種菌適性調査を実施し、種菌原菌の作製に支障がないことを明らかにした。
- 一般消費者による食味官能試験の結果、最有望株13-K12は菌興115号よりも美味しいと評価された。
- 最有望株および有望株と菌興115号を識別できるDNAマーカーを作出した。
- 秋期発生に関する量的形質遺伝子座を検出するDNAマーカー (cipAマーカー) を開発した。
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
- 本事業で育成した最有望株、有望株、3次選抜株、2次選抜株は、今後も栽培特性調査を継続し、特性把握に勤めるとともに、よりブランド力の強い品種の選抜を実施する。
- 諸特性の安定性が確認できた有望株を品種登録し、全国現地適応試験を検討する。
- 全国適応試験において良好な結果が得られた場合、鳥取県の「原木しいたけブランド化促進協議会」に諮り、栽培マニュアルの作成、調理法・加工法の開発、マーケッティングリサーチ、販売促進等の活動を通して、ブランド化・産地化に必要なノウハウを蓄積する。
- 上記ノウハウを基に全国で新品種のブランド化を推進し、生産と販売の拡大を目指す。
【今後の開発・普及目標】
- 2年後 (2020年度) は、新たに最有望株・有望株を選定する。
- 5年後 (2023年度) は、最有望株・有望株の中から1株程度品種登録し、生産普及を開始する (植菌原木数1万本程度)。
- 最終的には、植菌原木数100万本 (種菌売上額1億円) を達成し、全国各地で新品種のブランド化を目指す。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
- ブランド力を強化した新品種の栽培普及により、生産量増大と販売価格上昇を実現し、全国の原木シイタケの生産額が73億円増加すると期待できる。また、シイタケステーキ用原料が安定供給できることから、6次産業化による食品産業を創出するとともに、良質な原木シイタケの輸出促進にも貢献する。
- 乾シイタケ価格の高位安定化と収量安定性が図られ、我が国の代表的な里山文化ともいえる循環型農林業の一環としての原木シイタケ栽培を将来にわたり安定的に継続する基盤ができ、中山間地域の振興に貢献できる。
- 消費者に、安全・安心、高品質 (極厚肉・良食味)、健康機能性に富んだ原木シイタケを安定的に供給することが可能となり、国民の健康増進、和食文化の継承ならびに輸出等による海外への発信に寄与できる。
問い合わせ先 : (一財) 日本きのこセンター菌蕈研究所 寺島 TEL 0857-51-8111