生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

画期的機能を持つ野菜の接ぎ木システムの実用化と接ぎ木効率を向上させる接ぎ木接着剤の開発

年度2019ステージ基礎研究分野農業 (野菜)適応地域全国

キーワードトマト・ナス・タバコ、接ぎ木、オミクス、高糖度トマト、接ぎ木接着剤

課題番号 28001A
研究グループ 名古屋大学大学院生命農学研究科, 立命館大学生命科学部, 埼玉県農業技術研究センター, 理化学研究所CSRS
研究総括者 名古屋大学 白武 勝裕
研究タイプ 一般型 Aタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 画期的機能を持つ野菜の接ぎ木システムの実用化と接ぎ木効率を向上させる接ぎ木接着剤の開発 (PDF:576.3 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

接ぎ木は果樹や果菜の栽培に欠かすことができない日本が世界に誇る農業技術であるが、これまでに全くと言っていいほど、科学的なメスが入れられてこなかった。本課題では、接ぎ木を科学し、接ぎ木のメカニズムを明らかにすることでイノベーティブな接ぎ木技術の開発を目指す。すなわち、「1 従来の概念にない画期的な接ぎ木システムの開発」と「2 接ぎ木成功率を飛躍的に向上させる画期的な接ぎ木接着剤の開発」に取り組む。

2 研究の主要な成果

  • トマトを高糖度化させ (果実糖度を2度程度上昇させ)、低温障害を回避させる (気温が急激に下がった時の障害を緩和する) 接ぎ木システム (台木Xの利用) の開発に成功した。
  • 耐湿性が高い台木植物の選抜を行い、アマゾン川流域を原産地とするトマト野生種を、冠水時に側根を旺盛に発生させて湿害を回避する台木植物として選抜した。
  • 接ぎ木が得意なタバコ属植物のマルチオミクス解析の結果から、特定の酵素、二次代謝産物、植物ホルモンが特徴的な消長を示すことが明らかとなり、それらが接ぎ木の接着に強く関連することを示す結果を得た。

公表した主な特許・論文

  • 特願 2018-204973 トマト果実糖度及び/又は耐ストレス性向上に用いることができるトマト用台木 (白武勝裕ほか:名古屋大学、埼玉県農業技術研究センター)
  • 特願 2018-052727 接木改善剤 (野田口理孝ほか:名古屋大学、理化学研究所、立命館大学)
  • Tsugawa H et al. Computational metabolomics to characterize metabolites in stable isotope-labelled organisms. Nature Methods 16, 295-298 (2019)

3 今後の展開方向

  • トマトを高糖度化する接ぎ木システムについて、養液栽培による低段密植栽培技術の開発に取り組み、実用的な栽培技術になり得るかを評価するとともに、適した穂木品種の選定を行う。
  • 接ぎ木接着剤候補の至適濃度の検定および複数の接ぎ木接着剤候補の混合による相乗効果を調べ、接ぎ木接着効果の高い接ぎ木接着剤を開発する。

【今後の開発目標】

  • 2年後 (2020年度) は、接ぎ木接着剤のプロトタイプを提案する。
  • 5年後 (2023年度) は、実用化レベルの接ぎ木接着剤を提案する。
  • 最終的には、画期的な接ぎ木接着能力を持つ接ぎ木接着剤を開発し、上市する。

4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 接ぎ木接着剤の開発により、接ぎ木苗の生産効率が飛躍的に増大し、そして、これまでにない組み合せの接ぎ木が可能となることから、年間7億3,000万本以上 (350億円規模) の接ぎ木苗産業に大きく貢献する。
  • トマトを高糖度化する接ぎ木システムの開発により、安価で高品質な高糖度トマトを安定期に消費者に供給することが可能になる。

画期的機能を持つ野菜の接ぎ木システムの実用化と接ぎ木効率を向上させる接ぎ木接着剤の開発

問い合わせ先 : 名古屋大学 白武 勝裕 TEL 052-789-4026