年度2019ステージ基礎研究分野農業 (農業水利)適応地域全国
キーワード農業用フィルダム、基幹農業水利施設、地震、地震波伝搬特性、現位置評価
課題番号 | 28002A |
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研究グループ | 農研機構, サンコーコンサルタント, 三祐コンサルタンツ |
研究総括者 | 農研機構 黒田 清一郎 |
研究タイプ | 一般型 |
研究期間 | 平成28年~30年 (3年間) |
PDF版 | 基幹農業水利施設の安全性評価のための地震波伝播特性監視技術の開発 (PDF:588.6 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
国土強靭化や農村の安全に資するために、基幹農業水利施設である農業用フィルダム等の安全性評価や大規模地震災害発生時等における対応において、参考となる情報を提供することを目的とする。そのために、地震波干渉法と呼ばれる、実際の現位置での地震動観測記録に基づく評価解析手法によって、複雑な形状や構造を有する施設においても、その地震波伝播特性を明らかにする診断システムの開発を行う。
2 研究の主要な成果
- 基幹農業水利施設を対象として、その地震波伝播特性診断を可能にする計測システム及び解析技術の開発を行った。
- 数値解析 (動的解析) の援用により基幹農業水利施設の地震波伝播特性を再現する技術開発を行った。
- 地震波伝播特性を中長期に監視する技術を開発するとともに、大規模地震が発生した場合にその構造物に与える影響を解明する土質試験、模型実験及び現地観測記録解析技術の開発を行った。
- 常時微動と呼ばれる振動から地震時の伝播特性を推定する技術を開発し、複雑な形状や構造を有する施設において、効率的かつ低コストに巡回型調査計測を行うことを可能にした。
公表した主な特許・論文
- 黒田清一郎他.農業用ダム振動特性監視のための地震観測記録解析システム、農業農村工学会誌 85(3), 7-10 (2017).
- 相澤隆生他.地震波干渉法による弾性波探査、地盤工学会誌 65(1), 28-31 (2017).
- Ueno, T. et al. Elastic shear modulus variations during undrained cyclic loading and subsequent reconsolidation of saturated sandy soil, Soil Dynamics and Earthquake Engineering.116, 476-489 (2019).
3 今後の展開方向
- 地震時の安全性評価や大規模地震発生時の対応を支援する調査・観測技術を開発する。
- 基幹農業水利施設について構造物内部診断を常時行う機能を有した、新たな地震観測システムとしての実用化を目指す。
【今後の開発目標】
- 2年後 (2020年度) は、ICT技術等の導入により、広範な普及を目指しセンサ等ハードの低コスト化を図る。
- 5年後 (2023年度) は、AI技術等の導入により観測・解析と運用の自動化を行い管理コストの削減を図る。
- 最終的には、農業水利施設の安全性評価や災害対策に活用される調査診断ツールとしての実用化を行う。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
- 全国にある農業用ダムに設置されている地震観測システムの運用コストについて、ICT技術や自動解析技術等の活用により50%以上の低コスト化を図るとともに、構造物内部状態の診断監視機能を付与した新たな観測システムとしての実用化を行う。
- 我が国の国土強靭化や災害時の農村地域の安全に資するため、基幹農業水利施設の耐震照査や安全性評価、地震災害時の災害対策やBCP (事業継続計画) 等に活用できる調査診断ツールの実用化を行う。
問い合わせ先 : 農研機構 農村工学部門施設構造ユニット 黒田 清一郎 TEL 029-838-7570