生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

天然素材を活用した穀類のかび毒汚染低減化技術の創成

年度2019ステージ基礎研究分野農業 (カビ毒)適応地域全国

キーワード小麦・二条麦・六条大麦、赤かび病、天然物、DON・NIV、抵抗性誘導

課題番号 28007A
研究グループ 名古屋大学大学院生命農学研究科, 金沢大学学際科学実験センター
研究総括者 名古屋大学 木村 真
研究タイプ 一般型 Aタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 天然素材を活用した穀類のかび毒汚染低減化技術の創成 (PDF:554.5 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

麦作の量的、質的安全が世界的規模で発生する赤かび病によって脅かされている。本研究は、赤かび病抵抗性機構とかび毒産生制御機構を解析し、病徴抑制とかび毒蓄積に効果を発揮する天然素材の開発を目的とする。これまでに見出したニコチンアミドモノヌクレオチド (NMN)、トリゴネリン、トレオニンからなる天然素材を開花期のムギ類の穂に散布し、赤かび病抵抗性やかび毒産生に与える影響を温室接種試験において調べ、その作用の分子機構を明らかにし実用化への道筋をつけることを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 開発した天然素材の散布によって、二条オオムギ (Turkey45)、六条オオムギ (H.E.S.4)、矮性コムギ (USU-Apogee)における赤かび病菌の増殖抑制とかび毒低減化を実証した。
  • ニコチンアミドモノヌクレオチド (NMN) が赤かび病に有効な抵抗性誘導物質として機能することを見出し、赤かび病菌の増殖及びかび毒蓄積をともに抑制することを明らかにした。
  • トレオニンがかび毒産生を抑制する機構を明らかにしたほか、トリゴネリンが植物細胞内での病原菌の菌糸進展を抑制することにより赤かび病防除に寄与することを示した。
  • セコロガニンは抗菌活性を示さないが、赤かび病菌のかび毒産生を抑制する効果があり、赤かび病罹病植物に投与した際にもかび毒低減化効果を示すことを明らかにした。

公表した主な特許・論文

  • 特願 2018-153382 赤かび病の防除またはかび毒の低減のための薬剤 (赤かび病の防除またはかび毒の低減のための薬剤 : 金沢大学, 名古屋大学, 岡山大学)
  • Miwa, A. et al. Nicotinamide mononucleotide and related metabolites induce disease resistance against fungal phytopathogens in Arabidopsis and barley. Sci Rep.7, 6389 (2017).
  • Shiobara, T. et al. Identification of amino acids negatively affecting Fusarium trichothecene biosynthesis. Antonie van Leeuwenhoek 112, 471-478 (2019).

3 今後の展開方向

  • 気候の異なる地域にて実用品種を用いた圃場試験を行い、赤かび病防除データを蓄積する。
  • イネいもち病等の主要穀類病害に対するNMNの防除効果など、開発した天然素材の汎用性を検討する。

【今後の開発目標】

  • 2年後 (2020年度) は、各地方での圃場試験の結果に基づき、天然素材の最適化を行う。
  • 5年後 (2023年度) は、抵抗性誘導剤として他の穀類等への適用拡大を進め、開発した天然素材の需要拡大と生産コストの低減化へつなげる。
  • 最終的には、穂への散布の手間と殺菌剤の使用量を減らした防除技術として実用化する。

4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 赤かび病防除を目的とした殺菌剤の使用量、散布回数を低減することによって、国内だけで年間20億円の損害を防ぐ経済効果と麦作農業の経営安定化に貢献できる。
  • 天然素材の活用によって赤かび病の発生とかび毒の蓄積を低減できれば、麦作における質的、量的被害を緩和できるほか、国内の麦作の活性化とともに良質で安定的な国民の食糧の確保に貢献できる。

天然素材を活用した穀類のかび毒汚染低減化技術の創成

問い合わせ先 : 名古屋大学大学院生命農学研究科 木村 真 TEL 052-789-5744