年度2019ステージ基礎研究分野農業 (花き)適応地域東日本
キーワードユリ、ウイルス病、レクチン抵抗性、劣性抵抗性、RNAサイレンシング
課題番号 | 28009A |
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研究グループ | 東京大学大学院農学生命科学研究科, 新潟県農業総合研究所 |
研究総括者 | 東京大学 山次 康幸 |
研究タイプ | 一般型 Bタイプ |
研究期間 | 平成28年~30年 (3年間) |
PDF版 | 植物ウイルスに対するテーラーメイド抵抗性を付与した高付加価値花卉の開発 (PDF:482.9 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
作用機序の異なる複数の植物ウイルス抵抗性をテーラーメイドに組み合わせ、我が国のユリ生産において問題となるウイルスに最適かつ持続的な抵抗性を付与することを目的とする。ユリの主要植物ウイルス plantago asiatica mosaic virus (PlAMV、ポテックスウイルス属) 、lily mottle virus (LMoV、ポティウイルス属) に対して、現在4種類存在するウイルス抵抗性機構 (真性抵抗性、RNAサイレンシング、レクチン抵抗性、劣性抵抗性) の中から効果のある抵抗性をそれぞれ選択し、それらを複合的に誘導するユリ形質転換体の作出ならびに抵抗性評価を行う。
2 研究の主要な成果
- JAX1遺伝子による レクチン抵抗性と二本鎖RNA発現によるRNAサイレンシングを同時に誘導することにより、タバコ属植物において植物ウイルス感染を二重に阻害するデュアル抵抗性を付与した。
- 我が国で開発されたユリ形質転換技術を利用して、世界で初めてユリにRNAサイレンシング、レクチン抵抗性、劣性抵抗性を単独あるいは複合的に誘導する遺伝子構築を導入した形質転換体系統を作製した。
- PlAMVとLMoVに対する抵抗性ユリ系統を得た。
- ポテックスウイルスに対する劣性抵抗性遺伝子nCBPをシロイヌナズナより初めて同定し、劣性抵抗性がポテックスウイルスに対するテーラーメード抵抗性の新たな選択肢となり得ることを明らかにした。
公表した主な特許・論文
- Keima, T. et al. Deficiency of the eIF4E isoform nCBP limits the cell-to-cell movement of a plant virus encoding triple-gene-block proteins in Arabidopsis thaliana. Scientific Reports.7, 39678 (2017).
- Nijo, T. et al. Complete genome sequence of Lily virus X isolated in Japan. Genome Announcements.6, e01462-17 (2018).
3 今後の展開方向
- 形質転換ユリ系統に対するウイルス抵抗性検定試験を継続し、強抵抗性系統を選抜する。
- 他の有用形質との融合を図るとともに、雄性不稔系統の導入、遺伝子組換え作物としての生物多様性評価など、市場化を目指した試験研究を発展させる。
【今後の開発目標】
- 2年後 (2020年度) は、強ウイルス抵抗性系統を選抜・育成する。
- 5年後 (2023年度) は、高付加価値系統にウイルス抵抗性を付与する。
- 最終的には、雄性不稔系統に有用形質を付与し、市場化を見据えた系統を選抜・育成する
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
- 我が国発の有用形質を持つ独自品種として、ウイルス病による被害低減、切り花の産出額増加、国内での球根生産創出、球根輸出機会創出を達成できれば30億円を超える経済効果が期待される。
- 花卉の高品質化、低コスト化、省力化により産地のブランド力向上がもたらされ、産地活性化・地域創成につながるとともに、我が国の強みとして国産農産物輸出力強化に貢献すると期待される。
問い合わせ先 : 東京大学 山次 康幸 TEL 03-5841-5092