生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

きのこ発酵乳由来オピオイドペプチドを基盤とする高血圧症の予防・改善食品の開発

年度2019ステージ基礎研究分野食品 (機能性)適応地域全国

キーワードきのこ、牛乳、ペプチド、アミノ酸、機能性食品

課題番号 28010A
研究グループ 鳥取大学大学院工学研究科, 島根大学医学部
研究総括者 鳥取大学 岡本 賢治
研究タイプ 一般型 Bタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 きのこ発酵乳由来オピオイドペプチドを基盤とする高血圧症の予防・改善食品の開発 (PDF:412.9 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

高血圧はサイレントキラーとも呼ばれ、放置し続けると重篤な循環器疾患や血管性認知症等につながる。超高齢化社会での健康寿命延長に向け、こうした生活習慣病の予防や改善は急務であり、日常的な摂取で健康維持が期待できる安全な機能性食品の開発を目的とする。本研究は、牛乳をきのこで発酵させることで機能性ジペプチドTyr-Pro (YP) を効率的に生産する技術を確立するとともに、YPまたはそれを含有する発酵乳をモデル動物に投与した系で具体的な生体調節機能を明らかにすることを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 野生のきのこに牛乳で生育する能力があることを見いだし、その発酵能を活用することで、機能性ジペプチドTyr-Pro (YP) を高収率で生産することに成功した。
  • 脳卒中易発症ラット (SHRSP) が脳卒中を発症する食塩負荷条件下で、きのこ発酵乳を連続投与した結果、血圧降下作用のみならず、脳卒中に対しても予防効果を有することを発見した。
  • YPは既報のACE阻害ペプチドと比較して交感神経系への作用やオピオイド受容体との親和性の違いも認められるなど、それらとは異なるメカニズムで血圧降下に働くことが明らかとなった。
  • きのこ発酵乳中に血糖値改善に有効とされるDPP-4阻害活性を見いだした。

公表した主な特許・論文

  • 特願2016-124765 アンジオテンシン変換酵素阻害活性の高い発酵乳および生理活性ペプチドの製造方法 (岡本賢治 : 鳥取大学、並河徹 : 島根大学)
  • PCT/JP2017/023100 [WO2017/222029] アンジオテンシン変換酵素阻害活性の高い発酵乳および生理活性ぺプチドの製造方法 (岡本賢治 : 鳥取大学、並河徹 : 島根大学)
  • 特願2019-013247 DPP-4阻害ペプチドを含有するきのこ発酵乳を活用した抗糖尿病食品の開発 (岡本賢治 : 鳥取大学)

3 今後の展開方向

  • 食用きのこ等に潜在する発酵能を活用した高機能食品素材の効率的生産技術の確立を目指す。
  • きのこ発酵乳やそれに由来するペプチド素材の安全性ならびに生体調節機能について、動物実験に次いでヒト介入試験による検証を行い、新たな機能性食品を開発する。

【今後の開発目標】

  • 2年後 (2020年) は、きのこ発酵乳で期待する機能を効率的に発現させる培養技術を確立する。
  • 5年後 (2023年) は、きのこ発酵乳をベースとした機能性食品の製品設計を完了する。
  • 最終的には、機能性ペプチドを基盤とする健康長寿対策型の機能性表示食品を開発する。

4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 機能性表示食品の市場は成長を続けており、牛乳と食用きのこから製造するペプチド素材は多様な場面での利用が可能で、新規市場の開拓が見込まれることから、100億円以上の経済効果と酪農業の経営安定化に貢献する。
  • 新たな技術開発により安全で信頼される食料栄養・機能性に優れた食品を供給することは、国民の健康長寿に貢献するとともに、地域資源を生かした新しい産業や雇用を創出し、酪農業の6次産業化モデルが実現する。

きのこ発酵乳由来オピオイドペプチドを基盤とする高血圧症の予防・改善食品の開発

問い合わせ先 : 鳥取大学 岡本 賢治 TEL 0857-31-5276