年度2019ステージ基礎研究分野農業 (病害虫)適応地域全国
キーワードイネ・水稲・いもち病・農薬、ケミカルバイオロジー、二次代謝、天然物、植物保護
課題番号 | 28011A |
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研究グループ | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究総括者 | 国立研究開発法人理化学研究所 長田 裕之 |
研究タイプ | 一般型 Bタイプ |
研究期間 | 平成28年~30年 (3年間) |
PDF版 | 植物保護を目指した天然物ケミカルバイオロジー研究 (PDF:692.3 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
天然物ケミカルバイオロジー研究基盤を駆使して、環境負荷が少ない植物保護薬剤リード化合物の迅速で効率的な取得を行い、植物病害虫による農産物の収量や品質の低下の問題の解決に貢献することを目的にする。 天然物ケミカルバイオロジー的手法を用いて、天然化合物ライブラリーや発掘した微生物の二次代謝産物から、新規作用点の病原菌感染抑制化合物や病害抵抗性誘導化合物等を取得し、構造最適化を行い、これらの中から創薬リード化合物を得ることを達成目標にする。
2 研究の主要な成果
- イネいもち病菌が生産する二次代謝産物テヌアゾン酸が、従来の抵抗性誘導薬剤とは異なり、ジャスモン酸のシグナル経路を活性化してイネに病害抵抗性誘導することを見出した。
- 理研天然化合物バンクNPDepoから見出したNPD938が、様々な二次代謝遺伝子の発現を制御し、新規の作用機構でのイネいもち病菌防除と糸状菌からの二次代謝産物発掘へ応用可能なことを見出した。
- テヌアゾン酸生合成遺伝子TAS1のホモログを活用して、4種類の新規化合物を発掘し、一部の真核生物に特異的な生理活性物質を見出した。更に、トマトでの病害抵抗性誘導への化合物の関与を示唆した。
- イネいもち病菌のMBI-D農薬 (メラニン生合成の脱水酵素阻害剤) 耐性の原因となる農薬耐性型シタロン脱水酵素の阻害剤を取得し、構造活性相関を明らかにし、農薬開発への基礎データを取得した。
公表した主な特許・論文
- 特願2019-48574 イネいもち病防除剤 (出願人 : 理化学研究所)
- Yun, C.S. et al. Regulatory mechanism of mycotoxin tenuazonic acid production in Pyricularia oryzae. ACS Chem. Biol. 58, 2270-2274 (2017).
- Mikame, Y. et al. Synthesis of all stereoisomers of RK460 and evaluation of activity and selectivity as abscisic acid receptor antagonists. Chem. Eur. J. 25, 3496-3500 (2019).
3 今後の展開方向
- 候補化合物の作用機構を明らかにするとともに、構造最適化を行い、より活性等が優れた化合物の開発を行う。
- 農薬会社や県の試験場等で農薬登録を目指した評価を行い、実用化を目指す。
【今後の開発目標】
- 2年後 (2020年度) は、化合物の作用機構を明らかにし、より活性が高い化合物の取得を行う。
- 5年後 (2023年度) は、農薬登録を目指した評価を行い、実用レベルの化合物を選抜する。
- 最終的には、農薬登録を目指す。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
- 本研究課題では主に病原菌 (殺菌剤) を標的としている。農作物の保護のための殺菌剤として国内で一年間に約1000億円が使われている。このうち5%程度の売上に相当する被害を低減する薬剤を取得することを目指す。
- 天候不順や耐性菌の出現に左右されず、確実に植物病害虫による被害を防ぎ、安全・安心・安価で高品質な農産物を安定供給することが可能になる。
問い合わせ先 : 国立研究開発法人理化学研究所 TEL 048-462-1111