生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

定置網に入網したクロマグロ小型魚の選別・放流技術の開発

年度2019ステージ応用研究分野水産 (資源管理)適応地域全国

キーワードクロマグロ、定置網、資源管理、選別技術、放流技術

課題番号 28012B
研究グループ 東京海洋大学, 青森県産業技術センター水産総合研究所, 水産研究・教育機構水産工学研究所, 株式会社ホリエイ
研究総括者 東京海洋大学 秋山 清二
研究タイプ 産学機関結集型 Aタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 定置網に入網したクロマグロ小型魚の選別・放流技術の開発 (PDF:562.3 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

クロマグロの資源量は歴史的最低水準にあるため、我が国では小型魚 (30kg未満) の漁獲が規制されている。しかし、全国の沿岸に多数設置されている大型定置網にはクロマグロ小型魚が入網し、その漁獲量が規制値に達すると、たとえ他の魚が獲れていたとしても、操業を停止せざるを得ない状況に陥ってしまう。本研究では、クロマグロの資源管理と定置網の操業継続を同時に実現するため、定置網に入る多様な生物の中から、クロマグロ小型魚を健全な状態で放流する技術を開発することを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 定置網に入網したクロマグロ小型魚と大型魚を目合360mmの選別網で選別する「サイズ選別技術」を開発した。選別網を通過したクロマグロ小型魚の生残率は87%であった。
  • 定置網に入網したクロマグロ小型魚と他魚種を既存の金庫網で選別する「魚種選別技術」を開発した。ブリやヒラメ、シイラ等は金庫網に入網し、クロマグロ小型魚は金庫網に入網しないことが明らかとなった。
  • 揚網作業の中止と昇網の開放により、クロマグロ小型魚の自発的な網外逃避を促す「逃避促進技術」を開発した。バイオテレメトリー調査の結果、7割以上のクロマグロ小型魚が逃避することを確認した。
  • 箱網の魚捕部に設置したERウィンドー (緊急放流口) からクロマグロ小型魚を強制的に網外へ放流する「緊急放流技術」を開発した。ERウィンドーから放流したクロマグロ小型魚の生残率は88%だった。

公表した主な特許・論文

  • 越智洋介他. 音響カメラを用いた定置網内における魚群計測. 水産工学 54(3), 197-201(2018).
  • 秋山清二他. 定置網に入網したクロマグロ小型魚の放流方法と生残率. 日本水産学会誌 84(6), 1044-1046(2018).

3 今後の展開方向

  • 本研究で得られた成果は、岩手県、石川県、京都府、富山県等の大型定置網を実証漁場とする「太平洋クロマグロ漁獲抑制対策支援事業」(水産庁補助事業) で活用され、全国的な普及が図られている。
  • 開発研究ステージでは、本研究の成果を発展させ、「クロマグロの資源回復と定置網漁業の生産性向上を同時に実現する漁獲コントロール技術の開発」を実施、更なる新技術を開発する。

【今後の開発・普及目標】

  • 3年後 (2021年度) には、「クロマグロの資源回復と定置網漁業の生産性向上を同時に実現する漁獲コントロール技術」を完成させる。
  • 5年後 (2023年度) には、クロマグロが混獲される全国の大型定置網に技術を普及させる。
  • 最終的には、定置網をはじめとする各種漁業の漁獲量を適正に保つことにより、クロマグロ資源が回復し、現在の厳しい漁獲規制が緩和される。

4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • クロマグロの資源量は、小型魚の漁獲量を50%削減する現行措置を継続すれば、10年後には約4倍になると試算されており (水産庁)、資源量の増加による漁業経営の安定が期待される。
  • 国際ルールの遵守により、我が国水産業に対する国際的な信頼を高めることができる。また、クロマグロの資源回復により、最高級食材である天然クロマグロを持続的に生産し、安定した価格で供給できるようになる。

定置網に入網したクロマグロ小型魚の選別・放流技術の開発

問い合わせ先 : 東京海洋大学 秋山 清二 TEL 03-5463-0475