生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

優れた製粉性及び加工特性と多収量を実現する米粉イネ系統シリーズの開発

年度2019ステージ応用研究分野農業 (水稲)適応地域全国

キーワードイネ、突然変異系統、米粉、製粉加工適性、米粉パン評価手法

課題番号 28014B
研究グループ 農研機構 次世代作物開発研究センター, 日清製粉株式会社, 農研機構 食品研究部門
研究総括者 農研機構 次世代作物開発研究センター 堀 清純
研究タイプ 産学官結集型 Aタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 優れた製粉性及び加工特性と多収量を実現する米粉イネ系統シリーズの開発 (PDF:492.1 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

米粉の増産は、水田の有効利用、米の消費拡大に貢献するとともに、米の特徴を活かした美味しい食品の開発を促進すると期待されている。しかしながら、米粉は小麦粉に比べて割高であるため、米粉の価格競争力を上げることが喫緊の課題である。本研究課題では、種子貯蔵タンパク質と貯蔵澱粉の生合成に関する突然変異系統群の基礎研究の成果を、優れた製粉・加工適性と多収量を示す米粉用イネ系統シリーズの開発に応用して、製パン、製麺、製菓等の各用途に利用可能な新品種の育成につなげることを目標にする。

2 研究の主要な成果

  • 種子貯蔵タンパク質または種子貯蔵澱粉の組成が異なる20以上の米粉用イネ系統シリーズを作出した。
  • 貯蔵タンパク質変異を示す系統は、製パン性が良好で、うどんでは粘弾性があった。球状の澱粉粒と低いアミロース含有量を持つ系統は、製粉特性が高く食味や食感が良好なスポンジケーキ製造に適していた。
  • 米粉パン特有の食感である「しっとり」感と「もちもち」感について客観的な新規評価指標を確立した。また、プロテアーゼ等の副素材が製パン性に与える影響を明らかにした。

公表した主な特許・論文

  • 堀清純.ゲノム情報を活用した日本水稲の品質や食味を制御する遺伝子の探索.日本食品科学工学会誌 63(10), 484-487 (2016).
  • Ishikawa, D. et al. Study on the Change in Powder Properties of Rice Flour by Different Milling Processes. J. Appl. Glycosci. 64(4), 109-114 (2017)
  • Hori, K. Genetic Dissection and Breeding Effort of Grain Appearance in Rice. Rice Genomics, Genetics and Breeding 435-452 (2018)

3 今後の展開方向

  • 高い製粉・加工適性を持つイネ系統シリーズを作出したので、新品種開発による成果の実用化を予定。
  • 米粉パンの食感に関する新規評価指標を確立したので、米粉を利用した新規食品の製造販売の促進に貢献することを目指す。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、育種選抜の継続により新品種候補系統を選定する。
  • 5年後 (2023年度) は、作出系統の品種登録出願、及び、作出系統を原材料とする食品の開発を進める。
  • 最終的には、1つ以上の品種登録出願を行うとともに、特徴的な種子貯蔵成分を活かした3種類以上の米粉商品を展開して、米の需要喚起を目指す。

4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 従来の団子や和菓子等の用途に加えて、パン、麺、ケーキ等の小麦粉用途にも米粉の利用拡大が進み、 米の生産量の拡大や新規の食品開発の推進に寄与する。年間10万トン以上の米粉生産の目標が掲げられていることから、約350億円の経済効果となり得ると考えられる。
  • 本研究で作出した系統シリーズを利用して、製パン・製麺・製菓などの各用途に応じて使い分ける米粉が生産できるようになる。多様な米粉食品が開発、生産、加工、流通されるようになり、毎日の食卓で米粉がより一層身近な食材となる。

優れた製粉性及び加工特性と多収量を実現する米粉イネ系統シリーズの開発

問い合わせ先 : 農研機構 次世代作物開発研究センター TEL 029-838-7404 (代表)