年度2019ステージ応用研究分野流通 (活魚)適応地域全国
キーワード活魚、蓄養、品質保持、労務軽減、閉鎖循環システム
課題番号 | 28017B |
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研究グループ | 広島県総合技術研究所水産海洋技術センター, 公立大学法人県立広島大学, 株式会社クラハシ |
研究総括者 | 広島県総合技術研究所水産海洋技術センター 川口 修 |
研究タイプ | 産学機関結集型 Bタイプ |
研究期間 | 平成28年~30年 (3年間) |
PDF版 | 高品質の活魚を低コストで安定的に供給するための低塩分蓄養方法および装置の開発 (PDF:644.9 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
高品質な活魚を安定的に供給するため、流通過程で需給の強さにより出荷調整できる技術が求められている。従来の低塩分蓄養技術は、海水での蓄養と比較して高い生残率と外傷の悪化抑制を可能とするため出荷調整に貢献したが、換水にかかる労務量の大きさと、時々発生する異臭による風味劣化が問題となっていた。そこで、運用コストを下げつつ、食品としての活魚の評価を向上する低塩分蓄養方法と装置の開発を行い、これを実際の流通において実証規模で検証することを目標とする。
2 研究の主要な成果
- 経時的塩分制御蓄養方法 (成果1) とこれを行うための換水装置を開発 (成果2) することで、労務コストを抑制しながら、蓄養中活魚の活力、外観の維持を可能とした。また、本方法によれば海水または淡水のいずれかを取得困難な場所においても従来より低コストで低塩分蓄養の実施が可能である。
- 蓄養中に発生する異臭を再現し、この異臭による風味劣化の原因が2-メチルイソボルネオールであることを明らかにするとともに、その抑制方法を開発した (成果3) 。
- 漁獲や流通過程で外傷を負ったマダイの活力を評価できるバイオマーカーを開発したことで、外見からは判断できない低塩分海水蓄養の外傷回復効果を生理学的に定量化できた。(成果4)。
公表した主な特許・論文
- Kawaguchi, O. et al. Off-flavor of red seabream Pagrus major reared in recirculating aquaculture systems with low salinity is caused by 2-methylisoborneol. Fisheries Science, 85, 553-560 (2019).
3 今後の展開方向
- 市場等に開発した経時的塩分制御蓄養方法と換水装置を普及することで、活魚流通の拠点で出荷調整を可能とする。
- 異臭による風味劣化抑制方法の装置化を図り、また、本開発技術を活魚輸送技術に応用し活魚市場を開拓する。
【今後の開発・普及目標】
- 2年後 (2020年度) は、異臭による風味劣化防止のための装置と、低塩分蓄養技術を基礎とした効率的な活魚輸送方法と装置のプロトタイプを開発する。
- 5年後 (2023年度) は、異臭による風味劣化防止のための装置と効率的な活魚輸送装置を実用化する。
- 最終的には、低塩分蓄養のための装置が水産流通事業者によって導入されることで,低塩分蓄養技術が広く普及される。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
- 市場価値の高い天然活魚を、低コストで品質を維持しながら出荷調整することが可能となる。
- 活魚の出荷調整が可能となることで、高級活魚が多く獲れた場合でも値崩れせず適正な価格で販売できるため漁業経営が安定する。
- 活魚の出荷調整が可能となることで、流通業者は蓄養中の品質の低下を防ぎつつ歩留まりを向上できるため利益率が上がる。
- 活魚の出荷調整が可能となることで、消費者は結婚式等イベントで欲しい時に欲しい魚を確実に、美味しく食べることができる。
問い合わせ先 : 広島県立総合技術研究所水産海洋技術センター TEL 0823-51-2173