年度2019ステージ応用研究分野食品 (食の安全性)適応地域全国
キーワードロボット・バイオセンサ・カビ臭・昆虫・培養細胞
課題番号 | 28018B |
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研究グループ | 東京大学先端科学技術研究センター, 東京大学大学院工学系研究科, 株式会社東芝 |
研究総括者 | 東京大学先端科学技術研究センター 神崎 亮平 |
研究タイプ | 産学機関結集型 Bタイプ |
研究期間 | 平成28年~30年 (3年間) |
PDF版 | 昆虫嗅覚受容体を利用した飲食料由来のカビ臭の簡易検査システムの開発 (PDF:558.7 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
高感度かつリアルタイムな昆虫の匂い検出の本体である嗅覚受容体の機能を人工的に再現した検出素子を作り、カビ臭を高感度・高選択かつ簡便に検出することを目的とする。昆虫嗅覚受容体を発現させた培養細胞 (センサ細胞)の安定化技術、高感度化技術、大量培養技術の開発、センサ細胞の微弱な応答を簡便かつ高感度に検出する計測器の開発、およびセンサ細胞を計測器に組み込む技術の開発を通して、実サンプル中のカビ臭を高感度・高選択かつ簡便に検出できる可搬の簡易検査システムを開発することを目標とする。
2 研究の主要な成果
- 均質化・高感度化したセンサ細胞を市販の小型蛍光計測器に導入することにより、nMオーダ (溶液換算でサブppb) の検出限界で水道水中のカビ臭であるジェオスミンを検出する計測技術を確立した。
- 滅菌フィルタを用いた簡単な前処理のみで、水道原水中に混入する夾雑物質や背景臭の影響を受けず、ジェオスミンを検出できることを明らかにした。
- センサ細胞と小型蛍光計測器を用いて、実験室内のみならず、水源ダム湖畔 (現場) で原水中のジェオスミン検出に成功した。
- 1-オクテン-3-オール (マツタケオール) を検出する嗅覚受容体を用いて新規センサ細胞を作出し、農産物であるシイタケやマツタケに由来する香気成分の検出に利用できることを明らかにした。
公表した主な特許・論文
- PCT/JP2019/4475 難水溶性有機化合物の溶解システム、難水溶性有機化合物の溶解方法、及び匂い検出システム (東京大学)
- PCT/JP2018/001284 匂いセンサ (東京大学)
- Terutsuki, D. et al. Increasing cell-device adherence using cultured insect cells for receptor-based biosensors, R. Soc. open sci. 5 172366 (2018).
3 今後の展開方向
- 水道原水を対象として、ユーザーが現場で、簡便かつ高感度にジェオスミン等のカビ臭を検知可能な簡易検査システムへと改良し、広く普及を図る。
- 異臭を検出するさまざまな嗅覚受容体へと本技術を展開することにより、農林水産物や食品に混入する異臭の検知に利用できる匂いセンサシステムを開発する。
【今後の開発・普及目標】
- 2年後 (2020年)は、ユーザーの声を反映させた改良により、市販計測器により、誰もが水道原水中のジェオスミンを簡便かつ高感度に計測できる技術を確立する。
- 5年後 (2023年)は、水道原水中のジェオスミンのみならず、農産物中のカビ臭や異臭を検出する技術の開発、および簡易計測器の製品化を予定。
- 最終的には、用途に合わせて、農林水産物や食品が含む任意の対象臭を高感度に検出できる匂いセンサシステムを開発し、広く普及を図る予定。第1段階としてカビ臭等を対象に、農林水産関連企業等へ600台以上の普及を目指す。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
- 簡易検査システムの普及により、現場でのカビ混入早期発見を実現し、飲食料等の商品回収を未然に防ぐことが可能となり、匂い検知が必要とされるさまざまな分野に貢献できる。
- カビが混入した食品や水の製造段階での検知の実現により、安心安全な食品や水を生産し、提供することが可能となり、国民の食生活の質の向上に大きく貢献できる。
問い合わせ先 : 東京大学先端科学技術研究センター 神崎 亮平 TEL 03-5452-5195