年度2019ステージ開発研究分野農業 (病害虫)適応地域全国
キーワード施設・露地ナス、飛ばないナミテントウ、天敵温存植物、アルテミア、IPM体系
| 課題番号 | 28021C |
|---|---|
| 研究グループ | 農研機構, 佐賀大学, (株) アグリ総研, (地独) 大阪府立環境農林水産総合研究所, 岡山県農林水産総合センター, (株) アグリセクト, 大阪府泉州農と緑の総合事務所, 奈良県農業水産振興課農業技術支援係, 石川県農林総合研究センター中央普及支援センター |
| 研究総括者 | (国) 農業・食品産業技術総合研究機構 世古 智一 |
| 研究タイプ | 現場ニーズ対応型 Aタイプ |
| 研究期間 | 平成28年～30年 (3年間) |
| PDF版 | 飛ばないナミテントウの施設利用を促進し露地利用へと拡張する代替餌システムの開発 (646.5 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
消費者が求める安全・安心な農産物を提供し、生産者の農薬散布にかかる作業負担等を減らすため、重要害虫アブラムシの天敵である飛ばないナミテントウの定着を促進するための代替餌システムの開発を目的とする。このため、飛ばないナミテントウの定着促進により放飼頭数を減らせる代替餌システムの開発、ナスの施設および露地栽培で代替餌システムを導入したIPM 体系の構築、代替餌資材の実用化、露地用の製剤を実用化するため生態リスク評価および低コスト増殖系の開発を達成目標とする。
2 研究の主要な成果
- 飛ばないナミテントウの放飼頭数を半分以下に減らしても高い防除効果が得られる代替餌技術を開発した。
- 人工飼料による飛ばないナミテントウ増殖法を開発し、飼育環境等を改良することにより、既存技術に比べて飛ばないナミテントウ成虫の生産にかかるコストを3割低減できる増殖系を開発した。
- 施設 (半促成、促成) および露地ナスにおいて使用されるアブラムシ対策の化学農薬が不要で、天敵を利用した微小害虫防除にかかる経費を代替餌を導入しない場合の6割程度に抑えられるIPM 体系を構築した。
- 飛ばないナミテントウを露地で利用した場合の生態リスクについて、分散特性、越冬能力、寄主選択性、野生型との交雑頻度等を評価し、特段のリスクがないことを明らかにした。
公表した主な特許・品種・論文
- Seko, T. et al. The contribution of a beneficial insectary plant Scaevola aemula to survival and long-term establishment of flightless Harmonia axyridis in greenhouses. BioControl 62(2), 221-231 (2017)
- 金子修治他. 飛ばないナミテントウ幼虫とコレマンアブラバチ成虫の放飼による半促成栽培ナスのアブラムシ密度の長期抑制の検討 : 天敵温存植物・スイートアリッサムと代替餌・アルテミア耐久卵の併用.関西病虫研報 60, 55-59 (2018)
- Seko, T. et al. Effect of supplementary food containing Artemia salina on the development and survival of flightless Harmonia axyridis in greenhouses. BioControl 64(3), 333-341 (2019)
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
- 新規の代替餌であるアルテミア資材 (商品名「天敵用餌ひも」) が、(株) アグリセクトから販売。
- 代替餌資材の展示、現地展示圃の設置や勉強会等を開催し、開発された技術の普及を図る。
- 飛ばないナミテントウの露地野菜類用の製剤について登録申請する。
【今後の開発・普及目標】
- 2年後 (2020年度) は、施設において代替餌システムを組み込んだアブラムシ防除体系が普及する。
- 5年後 (2023年度) は、飛ばないナミテントウの露地野菜類用の製剤が農薬登録され、販売される。
- 最終的には、全国の施設および露地のナスにおける作付面積のうち2～5%程度の200～500haに代替餌システムを組み込んだIPM体系が普及する。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
- ナスを含む果菜類において、全国の施設および露地の作付面積のうち2～5%程度の規模に代替餌システムを導入した場合、4千万～1億円程度の微小害虫における防除費の削減効果が期待される。
- 開発技術を導入したIPM体系の普及により、消費者が求める安全・安心な農産物の確保や環境に優しい農業の推進、生産者の害虫防除にかける作業負担の削減等に貢献する。
問い合わせ先 : 農研機構 西日本農業研究センター 企画部産学連携室 TEL 084-923-5385