生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

土着天敵と天敵製剤<w天敵>を用いた果樹の持続的ハダニ防除体系の確立

年度2019ステージ開発研究分野農業 (果樹)適応地域全国

キーワードリンゴ・ナシ・サクランボ・ブドウ・ミカン、ハダニ類、カブリダニ類、土着天敵、天敵製剤

課題番号 28022C
研究グループ 農研機構 果樹茶業研究部門, 秋田県果樹試験場, 山形県農業総合研究センター園芸試験場, 千葉県農林総合研究センター, 島根県農業技術センター, 佐賀県上場営農センター, 石原産業(株)・石原バイオサイエンス(株), 大協技研工業(株), 宇都宮大学農学部
研究総括者 農研機構 果樹茶業研究部門 外山 晶敏
研究タイプ 現場ニーズ対応型 Aタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 土着天敵と天敵製剤<w天敵>を用いた果樹の持続的ハダニ防除体系の確立 (698.1 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

ハダニは薬剤抵抗性の発達が著しく早く、新剤開発を前提とした現在の化学合成殺ダニ剤による防除戦略には限界がある。そこで、"果樹園に元から生息する土着天敵の保全利用"と"天敵保護資材を用いた天敵カブリダニ製剤の放飼"の、経済性と利便性という、それぞれの長所を最大限に活かし、リンゴ、オウトウ、ナシ、施設ブドウ、施設ミカンの5作目を中心に、化学合成殺ダニ剤への依存を大幅に減らした、実用性に優れる「天敵を主体としたハダニ防除体系」を確立することを目標とする。

2 研究の主要な成果

  • リンゴ、オウトウ、ナシ、施設ブドウ、施設ミカンで、殺ダニ剤散布回数を年1回以内に削減した、天敵を主体としたハダニ防除体系"<w天>防除体系"を構築し、全国の産地で実証試験を実施した。
  • カブリダニ類の標準的室内薬剤検定法を確立し、殺虫剤・殺ダニ剤、殺菌剤の各種薬剤について、土着カブリダニ類とカブリダニ製剤に対する影響を網羅的に調べ、薬剤影響評価リストを公開した。
  • 草生管理による天敵保全・利用技術、天敵保護資材バンカーシート®を用いた果樹での天敵放飼技術を開発した。分子生物学的手法によるカブリダニの種識別など天敵効果を評価する調査手法を開発した。
  • 上記5作目のモデル体系の紹介とともに、果樹における天敵利用の方法や強化技術の導入、体系化の方法を一般化した実践マニュアルを作成した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 岸本英成他. 土着ジェネラリストカブリダニ4種 (ダニ目 : カブリダニ科) に対する各種殺虫剤の影響. 日本応用動物昆虫学会誌. 62(1), 29-39 (2018).
  • Mikawa, Y. et al. PCR‐based species identification applied in Japanese pear orchards to survey seasonal proportion changes of phytoseiid mite species. Appl. Entomol. Zool. 54, 133-139 (2019).
  • 新・果樹のハダニ防除マニュアルー天敵が主体の防除体系.
    https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/130513.html

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 他の作目への展開に加え、天敵の効率的利用や利用条件の緩和など、技術の改良による適用範囲の拡大に努め普及を促進する。
  • 成果をとりまとめたマニュアルの改定を適宜行うとともに、生産者向けの簡易版を作成し広く普及を図る。

【今後の開発・普及目標】

  • 3年後 (2021年度) は、施設果樹で150ha以上、露地果樹で200ha以上で導入
  • 5年後 (2023年度) は、全国15県以上で普及
  • 最終的には、ハダニ防除のスタンダード技術としての定着を目指す

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 開発した体系の普及により、リンゴ、オウトウ、ナシ、施設ブドウ、施設ミカンで、年間60億円以上の殺ダニ剤の削減とともに、持続的なハダニ防除が実現される。また、被害軽減による増収、残留農薬問題解決による輸出促進、天敵製剤の市場拡大にも貢献が見込まれる。
  • 化学合成農薬の節減とハダニの持続的防除の実現により、果物の安定生産・供給と環境保全の両立に貢献する。また、減農薬が進むことにより、食に安心・安全を求める国民のニーズに応えることできる。

土着天敵と天敵製剤<w天敵>を用いた果樹の持続的ハダニ防除体系の確立

問い合わせ先 : 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門 TEL 029-838-6453