生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

高級二枚貝タイラギの先端的養殖技術の開発

年度2019ステージ開発研究分野農業 (養殖)適応地域全国

キーワードタイラギ、早期採卵、人工受精法、人工種苗、完全養殖

課題番号 28024C
研究グループ 水産研究・教育機構, 香川県水産試験場, 山口県水産研究センター, 大分県農林水産研究指導センター
研究総括者 水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所 兼松 正衛
研究タイプ 現場ニーズ対応型 Aタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 高級二枚貝タイラギの先端的養殖技術の開発 (474.2 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

タイラギは大型の貝柱が珍重される高級二枚貝であるが、主生産地の有明海、瀬戸内海をはじめ全国で生産量が激減している。近年、水産研究・教育機構が開発した一機関あたり数十万個規模で生産できる種苗生産技術を用いて人工種苗を量産し、海面あるいは陸上水槽における脆弱な稚貝から小型サイズへの中間育成技術、殻長200mmサイズの成貝までの効率的養殖技術および成貝からの早期採卵技術 (人工受精法を含む) を開発することで、高収益なタイラギの完全養殖サイクルを確立することを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 海面垂下飼育と産卵直前の陸上給餌飼育により、早期の5~6月に採卵が出来ることを明らかにした。
  • レチノイン酸処理することで卵成熟を誘起でき、人工受精が可能になることを明らかにした。
  • 海面筏からの垂下式あるいは陸上水路式により、着底稚貝を80%以上の高い生残率と殻長10mm/月程度の速い成長速度 (水温24°C以上) で殻長30mmサイズの養殖用稚貝まで中間育成が可能となった。
  • 養殖では生残率80%以上が期待出来ること、海底部分あるいは基質を入れた飼育装置での養殖が成長の良いこと、同方法により1.2年で殻長200mmの商品サイズまで養殖可能であることを明らかにした。

公表した主な特許・品種・論文

  • 山本昌幸 他. 異なる基質・密度で垂下中間育成したリシケタイラギ稚貝の生残率と成長率. 水産増殖65 (3), 263-269(2017).
  • Awaji M.et al. Oocyte maturation and active motility of spermatozoa are triggered by retinoic acid in pen shell Atrina pectinata. Fisheries Science 84(3), 535-551(2018).
  • 前田 雪他. タイラギ種苗生産・養殖ガイドブック. pp.141(2019).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 早期採卵技術および人工受精法をブラッシュアップして更なる受精卵数と孵化率の向上を図り、タイラギ資源が著しく減少している有明海への種苗供給や関係機関へ技術を普及する。
  • 人工種苗を利用した完全養殖技術を全国に普及し、タイラギ養殖産業の創出を目指す。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、稚貝数万個オーダーで種苗生産出来る機関数を3団体以上に増やす。
  • 5年後 (2023年度) は、完全養殖スタイルでの養殖産業が本格化し、貝柱水揚げ金額で1億円を予定。
  • 最終的には、完全養殖での産業形態で普及し、併せて母貝団地を造成して天然資源の再生を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • タイラギ養殖産業が創出されれば、5,000個程度/人を養殖する小規模従事者100名程度で1.2億円の貝柱水揚げ金額が期待でき、平成26年の瀬戸内海中讃海域の漁獲量に匹敵する。また、資源状況の厳しい海域に母貝団地を形成することにより、天然資源の再生を期待できる。
  • タイラギの人工種苗を養殖まで一貫して生産することにより、産地が明確で生産方法が分かり易い食の安全と消費者の信頼の確保に貢献できる。また近年、漁業従事者の後継者不足が顕在化しているが、タイラギ資源の再生に成功すれば、伝統的な潜水器漁法を受け継ぐ後継者の育成も期待できる。

高級二枚貝タイラギの先端的養殖技術の開発

問い合わせ先 : 瀬戸内海区水産研究所 兼松 正衛 TEL 0848-73-5340