生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

日本の漆文化を継承する国産漆の増産、改質・利用技術の開発

年度2019ステージ開発研究分野林業・林産 (ウルシ)適応地域全国

キーワードウルシ、国産漆増産、漆量産木判別、大量増殖、熱重合塗装

課題番号 28027C
研究グループ 森林総合研究所, 山形県森林研究研修センター, 九州大学, 石川県林業試験場, 明治大学, 山形大学, 茨城県林業技術センター, 岩手県二戸市, (株) 末吉ネームプレート製作所
研究総括者 森林研究・整備機構 森林総合研究所 橋田 光
研究タイプ 現場ニーズ対応型 Aタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 日本の漆文化を継承する国産漆の増産、改質・利用技術の開発 (445.7 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

国宝・重要文化財修復等への国産漆の供給不足に対応するため、国産漆の増産・安定的供給に向けた技術開発を目的とする。このため、漆が良く出る量産木選抜のためのDNAマーカー、量産木の早期判別技術、大量増殖技術及び誘導物質を用いた効果的な漆量産化技術を開発し、未利用な漆について熱重合による塗装・加飾技術を開発して製品化を行うとともに、量産木間での定性・定量的な評価やデータベース化を行う他、新技術導入による収益性の改善を数量的に提示し、技術の普及に貢献することを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 漆が良く出る量産木を識別するためのDNA (EST-SSR) マーカーを開発した。
  • 漆滲出に関わる遺伝子を解明し、若齢時に量産木を判別できる早期判別用遺伝子マーカーを開発した。
  • 量産木の大量増殖に向けて、ウルシの挿し木増殖に関わる最適条件を明らかにした。
  • 硬化性が悪く未利用な漆に適した熱重合塗装・加飾技術を開発し、開発した技術による未利用漆を活用した製品を試作した。

公表した主な特許・品種・論文

  • Ando, Y. et al. Diaporthe toxicodendri sp. nov., a causal fungus of the canker disease on Toxicodendron vernicifluum in Japan. Mycosphere 8(5), 1157-1167 (2017).
  • 安藤裕萌他. ウルシの種子生産を阻害するウドンコ病菌の同定とその被害. 東北森林科学会誌 23(2), 57-61 (2018).
  • Masuya, H. et al. Fungi associated with Cryphalus rhusi (Scolytinae; Coleoptera) infesting lacquer tree, Toxicodendron vernicifluum. Journal of Forest Research Online, https://doi.org/10.1080/13416979.2018.1564532 (2019).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 漆生産地で遺伝子型ウルシデータベースを活用し漆生産を増大させるとともに、将来的にDNAマーカーに基づくウルシ林の造成及び管理に繋げる予定。
  • 未利用漆の熱重合塗装・加飾技術を各種金属に利用した漆工芸品を商品化し、デザイン性のある金属製品への漆塗装技術の実用化を目指す。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、普及造林面積2haを予定。
  • 5年後 (2023年度) は、普及造林面積4ha、熱重合漆の商品化を予定。
  • 最終的には、普及造林面積8haを目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 現状の国産漆生産額は7,500万円前後であり大きくないものの、開発した技術の普及により生産規模は2倍程度にでき、国産漆生産の増大や漆器等関連製品の供給拡大に大きく貢献できる。
  • 本研究の成果により、国宝や重要文化財の修復において国産漆のみの使用が可能になることから、観光資源としての高付加価値化や伝統文化の継承への貢献が期待できる。

日本の漆文化を継承する国産漆の増産、改質・利用技術の開発

問い合わせ先 : 森林総合研究所 橋田 光 TEL 029-829-8275