生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

難消化性澱粉を多量に含む変異体米を用いた低カロリー機能性食品の実用化

年度2019ステージ開発研究分野農業 (水稲)適応地域全国

キーワードイネ、品種育成、難消化性澱粉、糖尿病、米菓

課題番号 28029C
研究グループ 秋田県立大学, 秋田県農業試験場, 秋田大学, 亀田製菓株式会社
研究総括者 秋田県立大学 藤田 直子
研究タイプ 現場ニーズ対応型 Aタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 難消化性澱粉を多量に含む変異体米を用いた低カロリー機能性食品の実用化 (548.2 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

米の消費量が50年前から半減し、一方で、我が国の糖尿病およびその予備軍は国民の5人に1人に上るといわれている。このような、「農」と「医」の問題を解決するため、米に多量の難消化性澱粉(RS)を蓄積する高RS変異体米に着目する。高RS米を用いた機能性食品の実用化を目指すため、超多収米との戻し交配による育種、高RS米を用いた米菓の開発およびこれらを用いたヒト介入試験による機能性の実証と作用機序の解明することを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 消費者アンケートの結果が良好で、高いRS値を実現した食味の良い米菓を開発した。
  • RSが通常米の2~3倍高い高アミロース米2系統を品種登録申請した。10倍以上高い高RS米「A6」は、令和元年度に品種登録申請予定。
  • 澱粉構造が異なる新たな高RS米4系統を開発し、戻し交配を完了した。
  • 高RS米飯の長期摂取により安全性が確認された。高RS米を用いた米菓の単回摂取ヒト試験で、血糖値上昇抑制作用が確認された。

公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録出願 第33352号高アミロース水稲品種「あきたさらり」を品種登録出願 (H30年9月) (秋田県立大学・秋田県・JIRCAS)
  • 品種登録出願 第33353号高アミロース水稲品種「あきたぱらり」を品種登録出願 (H30年9月) (秋田県立大学・秋田県・JIRCAS)
  • Crofts N. et al. Rice mutants lacking starch synthase I or branching enzyme IIb activity altered starch biosynthetic protein complexes. Frontiers in Plant Science 9, 1817 (2018)

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 品種を許諾し、共同研究先等に販売するベンチャー企業、(株) スターチテックを設立 (2019年2月)。
  • 一般農家および農業法人での委託栽培による栽培適性化を開始、栽培面積の拡大。

【今後の開発・普及目標】

  • 1年後 (令和元年度) は、新設ベンチャー企業による新品種「あきたぱらり」と「あきたさらり」の許諾と販売実用化および高RS米の品種登録申請を終え、新開発の米菓のテスト販売(生産量 4t) を開始する。
  • 5年後 (令和5年度) は、米菓の本格販売 (生産量 8 t ) 。
  • 最終的には、高RS米を用いた様々な機能性食品を開発し、販売、普及(5年後の秋田県内のうるち米作付け面積の1%) を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 米をこれまでとは異なる形で積極利用することは、炊飯米の国内需要の低下に歯止めをかけ,生産者および開発企業の活性化につながり、耕作放棄地3.2万haが有効利用できれば、食料自給率の1%向上にも貢献する。
  • 消費者の「食べると太る」「糖尿病になる」等の米、ごはん、米菓へのマイナスイメージを払拭し、「お米から健康維持」という意識面から国民の健康増進への貢献が期待できる。

難消化性澱粉を多量に含む変異体米を用いた低カロリー機能性食品の実用化

問い合わせ先 : 秋田県立大学 藤田直子 TEL 018-872-1650