生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

高品質シイタケ安定生産に向けた天敵利用によるケミカルレスな害虫激減技術の開発

年度2019ステージ開発研究分野森林・林産 (きのこ)適応地域全国

キーワードシイタケ、害虫総合防除、天敵製剤、菌床栽培、原木栽培

課題番号 28031C
研究グループ 森林研究・整備機構 森林総合研究所, 徳島県立農林水産総合技術支援センター, 群馬県林業試験場, 佐賀県林業試験場, 大分県農林水産研究指導センター, 株式会社エス・ディー・エス バイオテック
研究総括者 森林研究・整備機構 森林総合研究所 北島 博
研究タイプ 現場ニーズ対応型 Bタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 高品質シイタケ安定生産に向けた天敵利用によるケミカルレスな害虫激減技術の開発 (501.5 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

シイタケ生産における主要な害虫を、化学農薬ではない天敵製剤 (線虫、細菌、糸状菌) などを用いて防除する技術を開発し、高品質なシイタケの安定生産に資することを目的とする。このため、天敵線虫製剤によるナガマドキノコバエ類防除技術の開発、天敵製剤による突発性菌床害虫の防除技術の開発、光誘引成虫捕殺と天敵製剤によるシイタケオオヒロズコガ類防除技術の開発、天敵製剤によるハラアカコブカミキリ成虫・幼虫の防除技術の開発を行い、シイタケ害虫総合防除マニュアルを作成することを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 天敵線虫製剤バイオセーフ懸濁液の菌床表面への散布により、ナガマドキノコバエ類幼虫被害を無視できるレベルに抑えられることを解明した。
  • 天敵線虫製剤バイオセーフ懸濁液または天敵細菌製剤バシレックス希釈液の菌床表面への散布により、ムラサキアツバ幼虫を駆除できることを解明した。
  • ニシシイタケオオヒロズコガにおいて天敵細菌製剤ゼンターリの施用で幼虫のシイタケ食害を減少できること、および成虫捕殺のための最適な光誘引トラップの設置方法を解明した。
  • ハラアカコブカミキリ成虫駆除のための省力・低コストな天敵糸状菌製剤バイオリサ・カミキリ・スリム施用法を開発し、ほだ木内の幼虫を天敵線虫製剤バイオセーフ懸濁液のほだ木表面への散布で半減できることを解明した。
  • シイタケ害虫総合防除マニュアル「しいたけ害虫の総合防除」を発行した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 北島博他. 昆虫病原性線虫によるフタマタナガマドキノコバエNeoempheria bifurcata(ハエ目キノコバエ科) 幼虫の防除試験. 関東森林研究69(1), 103-104(2018)

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 「しいたけ害虫の総合防除」を都道府県、メーカーなど広く関係者に配布して、防除技術や害虫に関する知識の普及を図り、シイタケ害虫被害を低下させる。
  • シイタケ害虫に効果の見られた天敵製剤の農薬適用拡大申請を行ったので、登録後に使用技術の普及を行い安定的なシイタケ生産を実現する。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、天敵製剤の施用法をより省力・低コストかつ効果的な方法へと改良する。
  • 5年後 (2023年度) は、シイタケ以外の栽培きのこ類への天敵製剤の施用を検討する。
  • 最終的には、化学農薬を用いない栽培きのこ類害虫の防除技術を確立し、安定生産に貢献する。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 生産者にとってはシイタケ害虫防除手段の選択肢が増え、ナガマドキノコバエ類では被害を現状の8%から2%まで低下できるとすれば、現在の推定被害額42.7億円を10.7億円まで減らすことができる。
  • 消費者にとっては、害虫被害のない安全・安心なシイタケを、安定して購入できるようになる。

高品質シイタケ安定生産に向けた天敵利用によるケミカルレスな害虫激減技術の開発

問い合わせ先 : (国研) 森林研究・整備機構 森林総合研究所 TEL 029-829-8377