生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

平成29年産に発生したさとうきびの低糖度の原因及び対策に関する研究

年度2019ステージ開発研究分野農業 (製糖用作物)適応地域九州,沖縄

キーワードサトウキビ、台風、糖度、夏植え、品種育成

課題番号 30035C
研究グループ 農研機構 九州沖縄農業研究センター, 沖縄県農業研究センター, 鹿児島県農業開発総合センター, 鹿児島大学, 新光糖業株式会社
研究総括者 農研機構 九州沖縄農業研究センター 安達 克樹
研究タイプ 緊急対応研究課題
研究期間 平成30年 (1年間)
PDF版 平成29年産に発生したさとうきびの低糖度の原因及び対策に関する研究 (567.0 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

鹿児島県を中心に平年より1.5~2.0ポイントの糖度低下が生じた平成29年産サトウキビの低糖度問題について、気象や品種、栽培等の観点から総合的に原因解明を進めるとともに対策技術を提案することを目的とする。このため、平成29年度を含む過去の試験結果を基に各種要因が糖度に及ぼした影響を解明し、糖度低下が中長期的傾向として捉え得る事象であるかを分析するとともに、サトウキビ生産を行う各地域のニーズに沿って、糖度安定化に資する栽培型の提示や適正品種の開発を進めることを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 平成29年の低糖度の主要因が10月下旬の台風 (潮風害) による糖蓄積阻害であることを示すとともに、台風の進路・風向と低糖度地区との地理的関係を図示し、防風林設置や台風後の潅水等の対策を提示した。
  • 夏植えや秋植えが収穫期の糖度水準の維持に有利な栽培型であることや、春植えでは植え付けの遅れにより可製糖量や糖度が減少することを示し、糖度の安定化には人的要因も重要であることを示唆した。
  • 低糖度や低単収の改善に資する品種特性として早期高糖性や安定多収性などを挙げ、鹿児島県と沖縄県における既存品種の特性を整理するとともに、新品種開発に向けて有望系統の特性調査を実施した。

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 防風林設置や潅水施設整備、適正品種開発支援などの点から、糖度安定化対策の基礎資料として行政部局に提供する。
  • 生産者、実需者や関係機関への速やかな広報を通じた啓蒙活動に取り組むとともに、新品種の育成など低糖度対策技術の開発に役立てる。

【今後の開発・普及目標】

今後のサトウキビ生産における糖度・収量の安定化には、植付遅れの防止や適切な栽培型・品種の選択がより一層重要となっており、農家戸数の減少も予想されるため適切な管理が可能となる栽培体系の構築が必須。

  • 2年後 (2020年度) は、今回得られた人的要因等の成果も踏まえて、ビレットプランター等の活用をはじめとしたさらなる効果的な栽培技術体系の開発を進める。
  • 5年後 (2023年度) は、早期高糖性や安定多収の品種の開発を引き続き進めるとともに、新品種を活用したサトウキビ機械化栽培体系の構築を目指す。
  • 最終的には、新品種や農業機械を活用することで、サトウキビ生産の糖度・収量の安定化を図る。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 鹿児島、沖縄両県では年間約150万トンのサトウキビを生産しており、糖度を1ポイント改善することで年間約20億円の経済効果が得られる。
  • 鹿児島、沖縄両県の島嶼地域における基幹作物であるサトウキビの生産量と品質の安定化は、雇用維持・創出を通じて島嶼部の持続的発展に貢献するとともに、我が国の砂糖自給率の向上に寄与する。

平成29年産に発生したさとうきびの低糖度の原因及び対策に関する研究

問い合わせ先 : 農研機構 九州沖縄農業研究センター 田村 泰章 TEL 0997-25-0100