生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

リンゴ黒星病の薬剤耐性菌発生地域における防除対策

年度2019ステージ開発研究分野農業 (病害虫)適応地域全国

キーワードリンゴ黒星病、防除、薬剤耐性菌、診断法、リスク評価

課題番号 30036C
研究グループ 農研機構 果樹茶業研究部門, 青森県産業技術研究センターりんご研究所, 長野県果樹試験場, 北海道立総合研究機構 農業研究本部中央農業試験場
研究総括者 農研機構 果樹茶業研究部門 伊藤 伝
研究タイプ 緊急対応研究課題
研究期間 平成30年 (1年間)
PDF版 リンゴ黒星病の薬剤耐性菌発生地域における防除対策 (456.7 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

近年、国内のリンゴ産地では黒星病が多発傾向にある。このため、生産現場での今後の発生被害軽減に向けた効果的かつ安定的な防除対策の構築を目的とする。国内の主なリンゴ生産地域におけるDMI剤 (ステロール生合成阻害剤) 耐性菌の発生状況の把握、現地における現状の防除体系の改善点の明確化、現行のスピードスプレーヤ (SS) の散布方法の問題点抽出と改善策の提示、を達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 北海道(一部地域)、青森県県南地域で、DMI剤耐性黒星病菌の発生を初確認した。長野県では、県外産リンゴ苗木に薬剤耐性黒星病菌が発生していることを確認した。
  • DMI剤耐性関与遺伝子変異を葉上病斑から直接検出する迅速遺伝子診断法が圃場のDMI剤耐性菌発達リスク評価に利用可能であることを確認した。
  • 青森県での栽培管理履歴と黒星病発生状況の関係の調査から、防除体系の改善点についてのパンフレット、事例集を作成し、次年度生産のための普及活動に用いた。
  • SSでの散布方法については、圃場周縁部における薬剤付着が中央部に比較して劣る傾向が認められ、これが園地周縁部で黒星病の発生が多い傾向にあることの一要因であることが示唆された。

公表した主な特許・品種・論文

  • りんごの黒星病におけるQoI剤耐性菌及びDMI剤感受性低下菌の発生について 平成30年度病害虫発生予察情報 特殊報第2号 北海道病害虫防除所 (H31年2月)
  • 研究成果情報「県外産りんご苗木における薬剤耐性黒星病の発生」長野県果樹試験場 (H31年3月) (https://www.agries-nagano.jp/research/genre05)
  • パンフレット「リンゴ黒星病防除の重要ポイント」、「リンゴ黒星病優良防除技術事例集」 青森県産業技術センターりんご研究所 (H31年3月)

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 耐性菌発生状況や考案された対策は、研究会や普及雑誌で情報提供するとともに、パンフレット、事例集にまとめ生産現場での指導に役立てる。
  • 薬剤耐性と遺伝子変異の関係の解明に基づいたDMI剤耐性菌発達リスク評価技術を開発する。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2020年度) は、栽培履歴と発生状況間の統計的解析等により、防除体系の更なる改善を図る。
  • 5年後 (2023年度) は、遺伝子変異の検出による圃場のDMI剤耐性菌発達リスク評価技術を実用化する。
  • 最終的には、開発技術の実装により黒星病被害を軽減し、リンゴの安定生産、安定供給を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • リンゴはカンキツ類に次ぐ生産量 (811,500t) があり、最近では国外への輸出 (34,678t) が堅調であるが、黒星病の多発により出荷量の大幅な減少が危惧されている。本研究の成果の普及で黒星病被害が軽減され、リンゴの安定生産、安定供給が確保できる。
  • リンゴはバラエティに富んだ果実の色合い、食味、歯ざわり、風味等を楽しめる果物となっており、リンゴの安定供給は、日本国民の豊かな食生活につながる。

リンゴ黒星病の薬剤耐性菌発生地域における防除対策

問い合わせ先 : 農研機構 果樹茶業研究部門リンゴ研究領域 TEL 019-641-3164