年度 2020 ステージ 応用研究 分野 水産-養殖 適応地域 全国 キーワード マダイ・トラフグ、養殖、精子、世代時間短縮、ゲノム編集 |
課題番号 | 26047AB |
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研究グループ | 京都大学、近畿大学、名古屋大学、水産研究・教育機構、株式会社ヒガシマル |
研究総括者 | 京都大学農学研究科 木下 政人 |
研究タイプ | 産学機関結集型 |
研究期間 | 平成29年~令和元年 (3年間) |
PDF版 | 早期精子形成・雌雄同体化技術を用いた養殖魚の革新的育種法の開発 (PDF:865.2 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
近年、世界の魚の消費量が増加し続けており健康志向や高級品嗜好など消費者の要望に対応した優れた形質を持つ養殖品種の作出が切望されている。本研究では、短期間に優良品種を作出する技術の開発を目的とする。メダカでは生殖細胞性決定に関与する GSD 遺伝子をゲノム編集により破壊すると未熟な卵巣に受精能を持つ精子が形成された。そこで、GSD 遺伝子破壊によるマダイ・トラフグの早期精子形成を実証し、骨格筋増量マダイ品種の短期間での作出、ゲノム編集魚の拡散防止策の開発、魚類の早期配偶子を形成するための新技術の開発を達成目標とする。
2 研究の主要な成果
- ゲノム編集ツール (CRISPR/Cas9) を用い、GSD 遺伝子を破壊したマダイ系統を確立した。本系統のマダイを用い、孵化後1年以内に卵巣内に精子を形成させることに成功した。
- ゲノム編集ツール (CRISPR/Cas9) を用い、GSD 遺伝子を破壊したトラフグ系統を確立した。本系統のトラフグ雌個体の卵巣に多量の精原細胞を作出することに成功した。
- 二重以上の逃亡防止網、および、紫外線照射装置を用いることで、ゲノム編集個体、卵、および精子の環境逃亡防止策を確立した。
- GSD 遺伝子破壊メダカを用いて同一個体の卵と精子を受精させることに成功した。
公表した主な特許・論文
- Sakae Y. et al. Starvation causes female-to-male sex reversal through lipid metabolism in the teleost fish, medaka (Olyzias latipes). Biology Open. DOI: 10.1242/bio.050054 (2020)
3 今後の展開方向
- GSD 遺伝子を破壊したトラフグ系統において、精子が形成される時期、および卵形成の有無を明らかにし、GSD 遺伝子破壊トラフグの活用方法を明確にする。
- 早期精子の形成が確認された GSD 遺伝子破壊マダイ系統を量産化し、マダイ新品種の開発を実施する試験研究機関などに分譲する。
【今後の開発・普及目標】
- 2年後 (2022年度) は、GSD 遺伝子破壊トラフグの早期精子作製方法を確立する。また、GSD 遺伝子破壊マダイでは、量産体制を整える。
- 5年後 (2025年度) は、ゲノム編集技術を用いた遺伝子改良と早期精子を用い、マダイの新品種を作出する。
- 最終的には、ハタ類など精子形成に長期間を有する魚種に対し本技術を適用する。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
- マダイとトラフグで優良形質を有する新品種が多数開発され、これらの生産量および消費量が1割増加すれば、年間150億円程度の経済効果が見込まれる。
- 消費者の望む新しい魚が流通し、国内産の安全で安心できる美味しい魚が供給される。魚類には成人病のリスクを低減する栄養素 (EPA/DHAなど) が豊富に含まれるため、国民の健康の維持向上に貢献できる。
問い合わせ先 : 京都大学 木下 政人 TEL 075-753-6445