年度 2020 ステージ 応用研究 分野 食品-食品製造・加工 適応地域 北海道 キーワード 農産植物葉部、成分抽出、オメガ3PUFA、カロテノイド、食用油 |
課題番号 | 26057AB |
---|---|
研究グループ | 北海道大学、北海道農業研究センター、宏輝株式会社 |
研究総括者 | 北海道大学 宮下 和夫 |
研究タイプ | 産学機関結集型 |
研究期間 | 平成29年~令和元年 (3年間) |
PDF版 | 農産物由来オメガ3素材の開発 (PDF:722.7 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
α-リノレン酸を始めとするオメガ3高度不飽和脂肪酸(PUFA)の必須性と疾病予防効果については良く知られている。しかし、酸化安定性の低さや抽出のコスト高が利用の妨げとなっている。そこで、各種農産植物葉部からの食用油を用いたオメガ3PUFA素材の抽出技術を開発する。この場合、抽出操作は簡便・低コストで、抽出油はそのまま食品素材として利用できる。また、有機溶媒を用いる通常方法のような環境への悪影響もない。これにより、栄養機能性、安定性、風味に優れたオメガ3PUFA素材を開発する。
2 研究の主要な成果
- オメガ3PUFA素材の原料として、大麦若葉、小麦若葉、ビート葉、大葉、トウモロコシ葉、明日葉、パクチーおよびケール抽出残渣などの農産資源を見出した。
- 食用油による農産植物葉部原料からのオメガ3PUFA素材抽出の最適条件として、原料の前処理(茹で処理など)、乾燥粉末化、極性脂質の添加などを見出したほか、最適温度・最適時間なども明らかにした。この結果、オメガ3PUFAの80%近く、また、カロテノイドの80%以上を食用油により抽出することができた。
- 乾燥・粉末化後に、MCT油 (中鎖脂肪酸油) やオリーブ油を用いることで、大麦若葉、オリーブ葉、ホウレンソウ、小豆、ハマナス果実などから風味の異なる複数の食卓油を試作できた。
- ホウレンソウ粉末やオリーブ粉末のMCT油とオリーブ油による抽出素材は優れた機能性を示した。
公表した主な特許・論文
- 特願2018-154819 食用油による脂溶性機能成分の効率的な抽出方法 (出願人 : 北海道大学)
- Teramukai, K. et al. Effective extraction of carotenoids from brown seaweeds and vegetable leaves with edible oils. Innov. Food Sci. Emerg. 60:102302 (2020).
3 今後の展開方向
- 農産葉部原料以外に、フルーツ残渣や海藻など様々な未利用資源の有効活用へと事業を展開する。
- 多様な原料と食用油を用いることで、栄養機能性と風味の異なる香味油や調理油の製品化を図る。
- 食用油を用いる方法は、低コスト・簡便で、抽出油をそのまま素材として利用できる利点があり、かつ、原料が少量でも応用可能である。これらの特徴から、新たな地域特産品の開発を地元企業と共同で行う。
【今後の開発・普及目標】
- 2年後 (2021年度) は、農業協同組合などと連携し、食用油を用いた油脂素材の供給を開始する。
- 5年後 (2024年度) までに、ヒト試験の結果に基づいた機能性食品の実用化を目指す。
- 最終的には、卓上油市場の10%程度のシェア (50億円) を目指す。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
- 開発した抽出法は、乾燥後に粉末化可能な農林水産物のすべてを原料にできる。このため、様々な農林水産物の未利用・低利用部分の活用が可能であり、農林水産物の有効利用に貢献できる。
- 得られた油脂素材は、優れた栄養特性を示し、原料由来の成分が素材に選択的に移行するため、独特の風味や色も有する。このため、サプリメントから食卓油まで様々な利用形態が可能であり、食品産業の活性化や豊かな国民生活に貢献できる。
問い合わせ先 : 北海道大学 宮下 和夫 TEL 0138-40-8804