生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

動物用バイオ医薬品実用化を可能とする大量生成技術の構築

年度

2020

ステージ

開発研究

分野

畜産-家畜衛生

適応地域

全国

キーワード

牛、家畜疾病対策、バイオ医薬品、大量生成、免疫チェックポイント阻害剤

課題番号 26058BC
研究グループ 国立大学法人北海道大学大学院獣医学研究院・扶桑薬品工業株式会社
研究総括者 北海道大学大学院獣医学研究院 今内 覚
研究タイプ 現場ニーズ対応型 Aタイプ
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 動物用バイオ医薬品実用化を可能とする大量生成技術の構築 (PDF:700.3 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

有効なワクチンや治療法がない動物の難治性疾患は多数存在し、多大な経済損失の原因となっていることから新規制御法の開発が求められている。動物用医薬品の開発は、ヒト用医薬品以上に生産コスト面を考慮する必要があり、積極的な研究開発・応用が進んでおらず、未だ疾病の摘発・淘汰に頼らざるを得ない。バイオ医薬品の生産コストおよび価格は、医薬品を産生する細胞の産生量に大きく起因する。本研究開発では、動物用バイオ医薬品の大量生成技術創出を目指した。

2 研究の主要な成果

  • バイオ医薬品を大量産生するプラスミドベクターの開発に成功し、特許出願に至った。
  • 新規開発プラスミドベクターを用いて、バイオ医薬品の生産コスト低減に資する生産技術を構築した。
  • 新規開発プラスミドベクターを用いて大量産生したバイオ医薬品が機能することを確認した。
  • 新規開発プラスミドベクターを用いて産生したバイオ医薬品 (ウシPD-L1抗体薬) の牛難治性疾病 (牛白血病、牛マイコプラズマ症など) に対する臨床試験において、免疫賦活効果や抗病原体効果が認められた。

公表した主な特許・品種・論文

  • 特願2018-99704、特許名 : 新規ベクターおよびその利用 (鈴木定彦、今内覚他 : 北海道大学)
  • Sajiki, Y. et al. Prostaglandin E2-Induced Immune Exhaustion and Enhancement of Antiviral Effects byAnti-PD-L1 Antibody Combined with COX-2 Inhibitor in Bovine Leukemia Virus Infection. J Immunol 203, 1313-1324 (2019).
    *農林水産省2019年農業技術10大ニュースに選出 (5位入選/10題)。
  • Goto, S. et al. Clinical efficacy of the combined treatment of anti-PD-L1 rat-bovine chimeric antibody with a COX-2 inhibitor in calves infected with Mycoplasma bovis. Jpn J Vet Res 68(2), 77-90 (2020).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 新規開発プラスミドベクターを応用した動物用バイオ医薬品 (抗体医薬、サイトカイン製剤、ホルモン製剤、酵素、血液凝固製剤など) の実用化研究を企業と連携し進めていきたい。
  • バイオ医薬品の更なる大量生成技術や新たな大量産生細胞選抜法 (Single cell picking法) の開発も進める。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) は、新規開発プラスミドベクターを応用して開発した様々な動物用バイオ医薬品の特許申請。
  • 5年後 (2024年度) は、新規開発プラスミドベクターを応用して開発した様々な動物用バイオ医薬品の薬事申請。
  • 最終的には、様々な動物用バイオ医薬品を臨床応用 (上市) し、販売、普及を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 新規開発プラスミドベクターを活用したバイオ医薬品の臨床応用が可能になれば、牛を含む家畜の疾病発生率が低減し、家畜の長寿命化、優良種(乳量が多い牛や肉質が優秀な家畜)の保存、ひいては家畜生産効率の向上が実現し経済的な波及効果が期待される。
  • 本研究の成果を活用したバイオ医薬品の普及によって、健康家畜由来の安全な畜産物 (乳製品・食肉など) の安定供給への貢献が期待される。

動物用バイオ医薬品実用化を可能とする大量生成技術の構築

問い合わせ先 : 北海道大学大学院獣医学研究院 今内 覚 TEL 011-706-5216