生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

寒冷地・温暖地における高品質多年生牧草の育成と利用年限延長のための技術確立

年度

2020

ステージ

開発研究

分野

農業-牧草

適応地域

東日本

キーワード

オーチャードグラス・ペレニアルライグラス、品種育成、越夏性、耐病性

課題番号 27032C
研究グループ 農研機構畜産研究部門、農研機構東北農業研究センター、青森県産業技術センター畜産研究所、宮城県畜産試験場、山形県農業総合研究センター畜産試験場、山梨県畜産酪農技術センター長坂支所、静岡県畜産技術研究所、家畜改良センター茨城牧場長野支場、タキイ種苗株式会社、神津牧場
研究総括者 農研機構畜産研究部門 内山 和宏
研究タイプ 育種対応型 Aタイプ
研究期間 平成27年~令和元年 (5年間)
PDF版 寒冷地・温暖地における高品質多年生牧草の育成と利用年限延長のための技術確立 (PDF:829.2 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

地球温暖化が進む中で高品質な牧草の安定生産に適した品種の開発と、その普及を目的とする。イネ科牧草で栄養価や嗜好性に優れるペレニアルライグラスについて、その弱点である越夏性の向上により利用年限を延長させると共に、東北地域で最も利用されているオーチャードグラスについて、消化性と耐病性を向上させた新品種をそれぞれ育成し、ペレニアルライグラスでは現地実証により、その有用性を明らかにすることを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 越夏性に優れるペレニアルライグラス新品種「夏ごしペレ」を育成し、各地での地域適応性試験において優秀性を確認し、品種登録出願を行った。
  • 消化性と耐病性に優れるオーチャードグラス系統「那系29号」を育成し、地域適応性試験において優秀性を確認した。
  • ペレニアルライグラス「夏ごしペレ」の現地実証試験を実施し、越夏性、多収性、家畜の生産性や乳量向上効果などを確認し、それらを取りまとめた栽培マニュアルを作成した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録出願33135 ペレニアルライグラス「夏ごしペレ」を品種登録出願 (H30年5月) (出願者名 : 農研機構、山梨県)
  • 藤森雅博他.越夏性に優れるペレニアルライグラス (Lolium perenne L.) 新品種「夏ごしペレ」の育成.農研機構研究報告東北農研121, 11-26 (2019).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • ペレニアルライグラス「夏ごしペレ」については、栽培マニュアルを使った普及活動と現地実証試験により、品種の普及を図る。
  • オーチャードグラス系統「那系29号」については、R2年7月までに品種登録出願すると共に、現地実証試験を実施することにより品種の普及を図る。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) は、「夏ごしペレ」について、販売用種子をヨーロッパで増殖し、3年後 (2022年度) に販売開始予定。
  • 5年後 (2024年度) は、「那系29号」について、種子販売開始を予定。
  • 最終的には、「夏ごしペレ」4,000ha と「那系29号」4,500ha の普及を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 「夏ごしペレ」と「那系29号」の普及によるTDN (可消化養分総量) 増収分を、サイレージ生産コスト節減および代替輸入乾草代として換算すると、7.7億円の経済効果が期待できる。また、耕作放棄地放牧などにより国土の保全も期待できる。
  • 本研究の成果を活用した品種の普及によって、今後、良質で多収な自給飼料基盤に立脚した畜産経営を育成し、畜産物の安定した生産・供給を可能にすることが期待できる。

寒冷地・温暖地における高品質多年生牧草の育成と利用年限延長のための技術確立

問い合わせ先 : 農研機構畜産研究部門 内山 和宏 TEL 0287-37-7550