生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

高消化性・紫斑点病抵抗性・耐倒伏性を持つ未出穂型ソルガムの育成と栽培・利用法

年度

2020

ステージ

開発研究

分野

農業-飼料作物

適応地域

全国 (東北・北海道を除く)

キーワード

ソルガム、未出穂型、高消化性、紫斑点病抵抗性、耐倒伏性

課題番号 28037C
研究グループ 信州大学農学部、農研機構次世代作物開発研究センター、雪印種苗株式会社
研究総括者 信州大学農学部 春日 重光
研究タイプ 育種対応型 Bタイプ
研究期間 平成28年~令和元年 (4年間)
PDF版 高消化性・紫斑点病抵抗性・耐倒伏性を持つ未出穂型ソルガムの育成と栽培・利用法 (PDF:569.1 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

購入飼料価格の変動、飼料自給率の向上、農地の有効利用と環境保全、食の安全・安心などの観点から、国産の自給粗飼料に立脚した畜産経営を安定化する必要がある。そこで、暖地・温暖地から寒冷地南部で栽培利用が期待できる高消化性、紫斑点病抵抗性を有し、耐倒伏性に優れた未出穂型ソルゴー型ソルガム新F1系統を育成し、この新F1系統の栽培・利用マニュアルを作成することを終了時達成目標とした。

2 研究の主要な成果

  • 高消化性、紫斑点病抵抗性、耐倒伏性に優れた未出穂型ソルガムF1系統「F60/04SK2-11」を育成した。高消化性及び紫斑点病抵抗性の選抜では、DNAマーカーを使いbmr-18遺伝子とds1遺伝子の導入を確認した。
  • 国内で育成した細胞質雄性不稔系統「F60」とその維持系統「P60」および花粉親系統「04SK2-11」の種子をチリに送り、2018年冬季に増殖した。この種子をF1種子生産地に選定した米国テキサス州において、F1採種が可能であることを2019年夏季に確認した。
  • 育成した新F1系統について、暖地、温暖地、寒冷地南部を対象にして、播種方法、刈り取り適期と収量性、トウモロコシとの混播栽培、サイレージ調製と飼料特性等を取りまとめ『未出穂型ソルガム「F60/04SK2-11」の栽培・利用マニュアル(ver.1)』を作成した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録出願予定 ソルガムF1親系統「F60」、「P60」、「04SK2-11」を品種登録出願 (令和2年3月) (出願者名 : 信州大学、雪印種苗(株))
  • 『育成した未出穂型ソルガム「F60/04SK2-11」の栽培・利用マニュアル(ver.1) 』(令和2年2月) 信州大学農学部栽培学研究室、雪印種苗(株) 千葉研究農場)

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 育成した新系統は、海外(チリ及び米国テキサス州)でのF1種子生産を行った後、寒冷地南部から温暖地・暖地まで「風立」に代わる実用品種として、広域的な普及を図る。
  • 新F1系統の適応地域の府県については、各府県の奨励品種選定試験に試験栽培用種子を提供するとともに、栽培・利用の手引きを提示し、奨励品種への採用を積極的に働きかける。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) は、米国テキサス州において実用規模でのF1採種試験を継続する。
  • 5年後 (2024年度) は、育成したF1系統の試作販売の準備を行う。
  • 最終的には、暖地・温暖地~寒冷地南部で既存品種「風立」に代わるF1系統として販売と普及を目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 新系統ソルガムの普及効果としては、高消化性遺伝子導入によってTDN 注) 含量58%へ向上、紫斑点病抵抗性遺伝子導入による罹病による減収回避や強風への倒伏被害の軽減、さらに、トウモロコシと比較して野生鳥獣による食害の軽減がある。経済的には、飼料コストについては約13円/kgの削減が、紫斑病については、罹病性品種から本品種に3,400ha置き換わることで、年間1億8千万円程度の被害回避ができる。

注) TDN:Total Digestible Nutrients、可消化養分総量

  • 新系統の普及は畜産経営においては飼料費を低減させ経営の安定化に繋がる。国産飼料による畜産物の生産は、国民の求めるニーズにかなった畜産物の安定供給に寄与する。

高消化性・紫斑点病抵抗性・耐倒伏性を持つ未出穂型ソルガムの育成と栽培・利用法

問い合わせ先 : 信州大学 農学部 TEL 0265-77-1441