年度 2020 ステージ 基礎研究 分野 農業-農業水利 適応地域 全国 キーワード 農業水利施設、鉄筋コンクリート開水路、補修、劣化、摩耗 |
課題番号 | 29001A |
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研究グループ | 農研機構農村工学研究部門、横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院、デンカ株式会社青海工場、東京農工大学大学院農学研究院 |
研究総括者 | 農研機構農村工学研究部門 川邉 翔平 |
研究タイプ | 一般型 |
研究期間 | 平成29年~令和元年 (3年間) |
PDF版 | 農業用コンクリート開水路の無機系表面被覆工の性能低下に関する基礎的研究 (PDF:934.5 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
農業用用水路の補修工法の一つである無機系表面被覆工も摩耗劣化等によって被覆厚さが減少し、寿命を迎えるため対策が必要となる。しかしながら、同一工法であっても施工された水路によって耐摩耗性が大きく異なり、寿命も異なる。本課題では被覆工の耐摩耗性の評価手法の提案、耐摩耗性低下の把握を目的とする。このため、耐摩耗性を現場で評価する非破壊手法を提案するとともに、他の劣化現象等が耐摩耗性におよぼす影響を明らかにし、将来的な余寿命予測のためのモデル化を達成目標とする。
2 研究の主要な成果
- 構造物表層の空気の通りやすさから緻密性を評価する非破壊試験法である表層透気試験を用いて、これから得られる表層透気係数と摩耗量に相関があることを示した。
- 施工時に適切な養生を行うことによって、耐摩耗性の向上が期待できることを、室内実験と現場試験施工によって示した。
- 実水路で受ける劣化 (乾湿繰返し、炭酸化、凍結融解、カルシウム溶脱) が補修材料の耐摩耗性に与える影響を明らかにした。
- 強度と耐摩耗性に相関があることを示し、劣化による強度低下を間隙比 (緻密性の度合い) の変化としてモデル化した。
3 今後の展開方向
- 非破壊試験による現場評価法を現場施工管理に導入することで、適切な施工を奨励し、補修後の性能向上を実現するための技術として提案する。
- 現場での摩耗量や状態モニタリングなどから、本課題で示した劣化モデルを検証しつつ、補修後の余寿命予測技術開発を目指す。
【今後の開発目標】
- 2年後 (2021年度) は、現場モニタリングにより本課題の成果の現場実証を行う。
- 5年後 (2024年度) は、非破壊試験の現場実装と余寿命予測技術の開発を目指す。
- 最終的には、一連の成果を「補修工法の性能向上と余寿命予測技術」として提案・実用化を目指す。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
- 養生の効果によって、耐摩耗性が倍増することを現場試験施工で確認した。適切な施工を確実に行うために施工管理技術として表層透気試験の導入を目指す。耐摩耗性が倍増する場合、ライフサイクルコストを半減することが見込める。
- 本成果が適用可能な基幹的な農業用用水路は、全国に約3.7万km整備されている。本成果等によるストックマネジメントを確実に実施することで、再建設する場合よりも約3割のコスト縮減が期待でき、農業水利施設の保全管理、更新を効率化できる。
問い合わせ先 : 農研機構農村工学研究部門施設保全ユニット 川邉 翔平 TEL 029-838-7573