生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

高温耐性に優れた水稲を創出するペプタイピング技術の開発

年度

2020

ステージ

基礎研究

分野

農業-水稲

適応地域

全国

キーワード

水稲、高温耐性、評価法開発、遺伝解析、タンパク質

課題番号 29002A
研究グループ 農研機構次世代作物開発研究センター、理化学研究所
研究総括者 農研機構次世代作物開発研究センター 米丸 淳一
研究タイプ 一般型
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 高温耐性に優れた水稲を創出するペプタイピング技術の開発 (PDF:762.7 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

水稲において、温暖化による気温上昇によって生じる高温登熟被害ならび高温不稔を回避するような品種が一層求められる。そこで、極めて高度な高温耐性を保有する品種開発および高温ストレスを回避するための新たな栽培技術を開発する目的で、現在まで利用されていない高温耐性遺伝子の探索を行うと同時に、高温ストレスを回避するための新たな系統選抜および栽培技術に利用可能なタンパク質(ペプチド)を用いたバイオマーカー作出(ペプタイピング技術)を達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 水稲における水耕、土耕、固形培地を用いた高温耐性評価系を新たに構築し、インド型品種が日本型品種より高温耐性を示すことを明らかにした。
  • 新たに構築した高温耐性評価系を用いて、高温ストレス下のバイオマスを38%増加させる高温耐性に関わる新規遺伝子領域(qHT11)を新たに検出した。
  • イネの葉の粗抽出物を用いたプロテオーム解析手法を確立し、1,000個近くのタンパク質を同定するとともに、高温ストレス程度の定性(量)化に利用可能な18個のタンパク質マーカーを同定した。
  • 抗原抗体反応を用いた検出法を確立するために、ハイグロマイシン耐性遺伝子由来のタンパク質(HPTII)を発現するイネの粗抽出液を用いて、タンパク質レベルでのマーカー検出の有用性を確認した。

公表した主な特許・論文

  • Ogawa, D. et al. Evaluation of QTL alleles for grain shape using haplotype information in the Japan-MAGIC rice population. G3.8, 3559-3565 (2018).
  • Takahashi, F. et al. Long-distance signaling in plant stress response. Curr. Opin. Plant Biol. 47, 106-111 (2019)
  • Takahashi, F. et al. Hormone-like peptides and small coding genes in plant stress signaling and development. Curr. Opin. Plant Biol. 51, 88-95 (2019)

3 今後の展開方向

  • 高温耐性QTL qHT11については、準同質遺伝子系統(NIL)等を作成し、成熟期における圃場評価による高温登熟耐性を調査し、高温登熟耐性育種素材としての有用性を検討する。
  • タンパク質マーカーの検討を行い、高温耐性に関する育種選抜および栽培技術開発への利用を図る。

【今後の開発目標】

  • 2年後 (2021年度) は、高温耐性QTLを保有したNILを作出し、特性調査を開始する。
  • 5年後 (2024年度) は、高温耐性に関与する重要遺伝子の集積系統を開発する。
  • 最終的には、極めて高温耐性に優れた水稲品種を育成する。

4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 高温耐性品種および新たな栽培技術によって、温暖化にともなって生じる高温や気象変動リスクによる減収および品質低下が回避され、約900億円程度の経済効果が期待される。また、植物に関する高温耐性メカニズムの解明を通じて、他の農作物の高温耐性付与への貢献が可能となる。
  • 安定した水稲生産が担保され米供給および価格の安定化につながり、安心安全な国内生産米の確保が可能となる。加えて、農家の収入確保につながることが期待できる。

高温耐性に優れた水稲を創出するペプタイピング技術の開発

問い合わせ先 : 農研機構次世代作物開発研究センター 米丸 淳一 TEL 029-838-7135