年度 2020 ステージ 基礎研究 分野 農業-病害虫 適応地域 全国 キーワード イネ・トマト・トレニア、紋枯病、複合病害抵抗性、植物化学調節剤、アシルスペルミジン |
課題番号 | 29004A |
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研究グループ | 東京大学農学生命科学研究科、農研機構生物機能利用研究部門 |
研究総括者 | 東京大学 浅見 忠男 |
研究タイプ | 一般型 |
研究期間 | 平成29年~令和元年 (3年間) |
PDF版 | 植物病害抵抗性に関わる内生物質の応用に向けた展開研究 (PDF:1.2 MB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
本研究の目的は 1) 長鎖アシルスペルミジン類縁体病害抵抗性誘導剤候補物質の選抜と作用メカニズムの解明、ならびに 2) チトクロームP450酵素をコードするBSR2高発現植物由来の抵抗性誘導物質の探索と抵抗性スペクトラム解析である。達成目標は、難防除病害である紋枯病を含む広範な病害に対する抵抗性を植物に誘導する植物由来の新規薬剤開発を可能にするリード化合物の発見ならびにBSR2高発現作物が新たに1種類の病害虫に抵抗性を示すことを明確にすることである。
2 研究の主要な成果
- 長鎖アシルスペルミジン類については、イネにおける活性型天然物の同定と高活性型合成類縁体の創製を行い、紋枯病を含む広汎な病害に有効な抵抗性誘導能を有する化合物を2つ以上同定・創製した。
- イネにおける構造活性相関を参照し、シロイヌナズナにおいてトマト斑葉細菌病に対する抵抗性誘導能を有する天然化合物を発見し、さらなる誘導化を行うことにより非天然型高活性化合物を見出した。
- アシルスペルミジン類の迅速分析法を確立して、アシルスペルミジン類縁体は天然物として広汎かつ多様な植物中に存在していることを示した。
- BSR2 高発現作物を用いた抵抗性スペクトラムの解析では、新たに5種類の病害に対し抵抗性になることを示した。
公表した主な特許・論文
- Maeda, S. et al. The rice CYP78A gene BSR2 confers resistance to Rhizoctonia solani and affects seed size and growth in Arabidopsis and rice. Scientific Rep.9, 587 (2019).
(2019年農業技術10大ニュースに選定されました。)
3 今後の展開方向
- 本研究により見出されたアシルスペルミジン類やその誘導体の病害抵抗性誘導活性について、構造活性相関を通じた最適化を行い、高活性な化合物を絞り込む。
- 絞り込みの過程でイネ以外に野菜類でも副作用が少ない化合物を選抜する。
【今後の開発目標】
- 2年後 (2021年度) は、化合物についてイネ、アブラナ科、ナス科作物で重要病害への抵抗性誘能を評価する。
- 5年後 (2024年度) は、上記以外の作物に適用範囲の拡大を図り、実用的処理技術を開発する。
- 最終的には、抵抗性誘導剤として国内のみならず国外での普及を目指す。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
- イネ紋枯病の被害額は124.7 億円 (2 万円/60 kg 試算) 程度と考えられるが、抵抗性誘導剤の開発によりこれを低減でき、稲作農家の経営安定化に貢献できる。
- 従来型の殺菌剤使用を減らすことができ、食料の生産や供給に貢献できるばかりでなく、新タイプの抵抗性誘導剤は世界中で使用可能であるので、製造・販売にかかわる企業・人の所得増大や雇用増にもつながる。
問い合わせ先 : 東京大学 浅見 忠男 TEL 03-5841-5157