年度 2020 ステージ 基礎研究 分野 農業-病害虫 適応地域 全国 キーワード 植物ウイルス病、月桃、ウイルス防除、非可食性植物、沖縄 |
課題番号 | 29005A |
---|---|
研究グループ | 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所、東京大学院農学生命科学研究科 |
研究総括者 | 岡山県農林水産総合センター 畑中 唯史 |
研究タイプ | 一般型 |
研究期間 | 平成29年~令和元年 (3年間) |
PDF版 | 新たな農資源ゲットウを利用した植物ウイルス防除剤の実用化研究 (PDF:603.5 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
植物ウイルス病の被害は世界で6兆円と見積もられているが特効薬となる農薬は存在せず、媒介生物の防除、弱毒ウイルス及び耕種的防除によりウイルス病被害を軽減させているのが実情であり、革新的防除法の開発が切望されている。これまでに沖縄等の南西諸島に自生するショウガ科ハナミョウガ属の非可食性植物"月桃 (ゲットウ) "の抽出精製物に強力な抗ウイルス効果があることをみいだした。本課題では、月桃由来のウイルス防除活性分子を同定することで新規植物ウイルス防除剤の開発をめざす。
2 研究の主要な成果
- 月桃に含まれる抗植物ウイルス活性分子を同定した。
- 月桃の栽培土壌のpH、日照度、冬季栽培温度等について最適条件を見いだすとともに、これまで未分類であった月桃及びその近縁種をDNAマーカーによって分類し、高い抗植物ウイルス活性分子を含む月桃優良個体を選抜した。
- 月桃由来成分は、実用作物であるナス科トマト、アブラナ科ハクサイ、ウリ科キュウリに感染する植物ウイルスに感染予防効果を示した。
公表した主な特許・論文
- 特許第6635524 号植物病害の防除剤 (鳴坂義弘ほか:岡山県)
- 特願2019-54641 ショウガ又はタケの抽出物による植物防除技術 (鳴坂義弘ほか:岡山県)
- Narusaka M et al. Inhibitory effects of Alpinia zerumbet extract against plant virus infection in solanaceous plants. Plant Biotech. 37 (1) : (2020)
3 今後の展開方向
- 月桃由来の高い抗植物ウイルス活性分子の作用機作を解明するとともに、本活性分子の低コストかつ大量製造法を確立する。
- 月桃由来の抗植物ウイルス活性分子について、各種作物による圃場レベルでの評価を行い、抗植物ウイルス剤のプロトタイプを創製する。
【今後の開発目標】
- 2年後 (2021年度) は、月桃の大量栽培法および活性成分の低コストかつ大量製造法の指針を得る。
- 5年後 (2024年度) は、月桃由来の抗植物ウイルス活性分子を主成分としたプロトタイプ剤を創製する。
- 最終的には、抗植物ウイルス剤の新規市場を形成し、全国の農家に販売、普及する。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
- 本成果により、国内で年間1,000億円以上、世界で6兆円と推定される作物のウイルス病の被害が低減されることにより、国内で年間500億円以上の経済効果となる。
- 本成果により、様々な種類の植物ウイルスの感染を回避でき、良質な食料の安定供給と価格の安定に貢献できる。
問い合わせ先 : 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 畑中 唯史 TEL 0866-56-9450