生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

魚類において生殖系幹細胞を皮下移植して卵を得る技術の開発

年度

2020

ステージ

基礎研究

分野

水産-養殖

適応地域

全国

キーワード

ホンモロコ・ゼブラフィッシュ、免疫不全系統、異種移植、配偶子形成、品種改良技術

課題番号 29007A
研究グループ 情報・システム研究機構国立遺伝学研究所、名古屋大学、立命館大学
研究総括者 情報・システム研究機構国立遺伝学研究所 酒井 則良
研究タイプ 一般型
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 魚類において生殖系幹細胞を皮下移植して卵を得る技術の開発 (PDF:568.6 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

養殖用魚類では、成熟卵や受精卵を凍結保存できないことが品種保存維持の障壁となっている。生殖系幹細胞は卵や精子へ分化する凍結保存可能な幹細胞で、私たちは生殖系幹細胞をゼブラフィッシュ免疫不全系統へ皮下移植して精子を産生する技術を確立している。本研究では、この技術を発展させて生殖系幹細胞から卵を得る技術の開発を目的とし、達成目標は、1. 卵へ分化させる移植技術の開発、2. 生殖系幹細胞の卵分化マーカーの開発、3. この移植技術の水産有用魚への展開、とした。

2 研究の主要な成果

  • 生殖系幹細胞の卵巣内移植法を開発し、宿主の内在卵母細胞を薬剤により除去することで、移植した生殖細胞から卵を得ることに成功した。
  • ホンモロコの生殖細胞をゼブラフィッシュへ移植する技術を開発し、属を超えた異種移植による精子産生および卵母細胞への分化に成功した。個体の性成熟よりも早く精子を産生できることがわかった。
  • 卵形成極初期のマーカー遺伝子を含む、複数の卵分化マーカー遺伝子の発現タイミングを明らかにした。
  • ホンモロコ免疫不全系統の作製を進め、ゲノム編集技術により免疫関連遺伝子 rag2 に変異を導入した。

公表した主な特許・論文

  • 特願2020-74968 特許名魚類における他家卵子および異種配偶子の製造方法 (出願人 : 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構)
  • Kikuchi, M., et al. foxl3, a sexual switch in germ cells, initiates two independent molecular pathways for commitment to oogenesis in medaka. Proc Natl Acad Sci USA 117, 12174-12181.

3 今後の展開方向

  • ホンモロコの免疫不全個体を作出し、ホンモロコへの皮下移植および卵巣内移植を展開する。コイ科魚において異種移植が可能な範囲を特定する。
  • クサフグの免疫不全系統を作出し、トラフグ生殖系幹細胞移植による早期配偶子産生技術を開発する。

【今後の開発目標】

  • 2年後 (2021年度) は、ホンモロコにおける他家および異種の早期配偶子産生技術の実用化。
  • 5年後 (2024年度) は、クサフグによるトラフグの早期配偶子産生技術の実用化。
  • 最終的には、クエやマグロ等の大型海産魚の早期配偶子産生技術の確立を目指す。

4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • コイ科魚およびフグの早期配偶子産生技術の普及により、迅速な品種改良を実現できるとともに、大型海産魚の新規品種改良技術モデルを提示できる。
  • 養殖魚の効率的品種改良技術は、優良品種による養殖魚の国際競争力を高め、持続的な食用魚類の供給とそれを中核とした安定的な水産養殖業を実現し、良質な魚類タンパクの継続的な確保に貢献できる。

魚類において生殖系幹細胞を皮下移植して卵を得る技術の開発

問い合わせ先 : 国立遺伝学研究所 TEL 055-981-6707