生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

微生物殺虫剤を用いた野菜重要病害虫のデュアルコントロール技術の開発

年度

2020

ステージ

応用研究

分野

農業-野菜

適応地域

全国

キーワード

農薬、微生物殺虫・殺菌剤、昆虫寄生菌、野菜類うどんこ病、ブロワー型散布機

課題番号 29008B
研究グループ 農研機構野菜花き研究部門、長野県野菜花き試験場、奈良県農業研究開発センター、岐阜県農業技術センター、三重県農業研究所、アリスタライフサイエンス(株)
研究総括者 農研機構野菜花き研究部門 飯田 祐一郎
研究タイプ 産学機関結集型 Aタイプ
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 微生物殺虫剤を用いた野菜重要病害虫のデュアルコントロール技術の開発 (PDF:973.5 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

我が国では化学農薬に耐性を示す病害虫の発生が深刻化し、また地球規模での環境保全が推進される中、今後さらなる微生物農薬の利用拡大は不可欠である。しかし、微生物農薬は防除対象が限定的、環境条件によって効果が変動しやすい等、問題点も残されている。本研究では、微生物殺虫剤の中から病害にも防除効果を示す微生物農薬を探索し、病害虫デュアルコントロール技術を開発する。また農薬散布の省力化・軽労化・防除効果の安定化にも寄与する微生物農薬の新たな散布機を開発する。

2 研究の主要な成果

  • 市販の微生物殺虫剤の作用スペクトラムを解析し、特にボーベリアバシアーナ乳剤 (ボタニガードES、以下ボーベリア乳剤)が野菜類3科5作物の各種うどんこ病に対して高い防除効果を示すことを明らかにした。
  • ボーベリア乳剤が野菜類うどんこ病に対する防除効果から農薬登録 (適用拡大) が認可され、微生物殺虫・殺菌剤として使用可能となった。
  • ボーベリア乳剤の有効成分である昆虫寄生菌 Beauveria bassiana GHA株 は、植物の表面および組織内に定着性を示し、キュウリうどんこ病に対して抵抗性を誘導することで防除効果を発揮することが明らかとなった。
  • ブロワーを用いた微生物農薬用の散布機を開発した。本機は導入コストが安価であり、水希釈を必要としないため作業の軽労化、作業時間の短縮、また湿度抑制による防除効果の安定化に寄与する。さらなる改良を加え、各種微生物殺虫・殺菌剤の風媒散布処理方法の適用拡大後に導入を目指す。

公表した主な特許・論文

  • Nishi, O. et al. Epiphytic and endophytic colonization of tomato plants by the entomopathogenic fungus Beauveria bassiana. Mycology 58, in press (2020).
  • Iida, Y. et al. Evaluation of the potential biocontrol activity of Dicyma pulvinata against Cladosporium fulvum, the causal agent of tomato leaf mold. Plant Pathol 67, 1883-1890 (2018).
  • 飯田祐一郎他. 病原菌と害虫を同時に防除! ~病害虫デュアルコントロールの概念~. 技術と普及1, 38-39 (2019).

3 今後の展開方向

  • 開発した微生物殺虫・殺菌剤を用いて現地実証試験を実施し、効率的な防除効果を発揮させる散布方法を現地実証試験によってマニュアル化することで、全国への普及を図る。
  • 開発したブロワー散布機のノズル部分の製品化を目指す。多くの既成ブロワーにも装着可能で、軽量で高い耐久性を示すノズルを市販し、散布技術のマニュアルを作成することで全国への普及を図る。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) は、微生物殺虫・殺菌剤による病害虫デュアルコントロール技術およびブロワー型農薬散布機の散布技術を確立する。
  • 5年後 (2024年度) は、病害虫デュアルコントロール技術およびブロワー型散布機の普及活動を開始する。
  • 最終的には、病害虫デュアルコントロール技術を全国の施設園芸の 3,800ha で普及を図る予定。

4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 微生物農薬を用いた病害虫防除によって、化学農薬が効かない耐性害虫・病原菌の発生を防ぐ。
  • 全国での病害虫デュアルコントロール技術およびブロワー型散布機の普及により、化学農薬の削減、散布作業の省力化等により、約20億円の経済効果と園芸農家の経営安定化に貢献できる。
  • 本研究成果は化学農薬の大幅な削減に貢献し、次世代に引き継がれる持続型農業を推進するだけでなく、産地のブランド化や地域経済に安定化とともに輸出拡大にも寄与し、国民に良質な食料を提供する。

微生物殺虫剤を用いた野菜重要病害虫のデュアルコントロール技術の開発

問い合わせ先 : 農研機構野菜花き研究部門 TEL 029-838-7035