生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

除草剤抵抗性遺伝子HIS1ゲノム情報を使ったイネ育種・生産システムと新規創薬への展開

年度

2020

ステージ

応用研究

分野

農業-水稲

適応地域

全国

キーワード

イネ、除草剤、処理体系、抵抗性遺伝子創出、新剤開発

課題番号 29009B
研究グループ 農研機構 (作物研・生物研・中央研)、埼玉大学、富山県、(株) エス・ディー・エスバイオテック
研究総括者 農研機構 次世代作物開発研究センター 黒木 慎
研究タイプ 産学機関結集型 Bタイプ
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 除草剤抵抗性遺伝子HIS1ゲノム情報を使ったイネ育種・生産システムと新規創薬への展開 (PDF:947.0 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

飼料用等新規需要米品種に除草剤感受性品種が存在し、栽培上の問題が生じている。新規除草剤抵抗性遺伝子HIS1を起点として、「抵抗性型」への改変など革新的なイネの開発や除草剤処理体系の構築などが期待されている。HIS1ゲノム情報を活用した新規除草剤抵抗性遺伝子を創出し有用なイネ系統を開発すること、除草剤反応性を踏まえた持続的・安定的なイネ栽培体系を策定すること、および農薬化学的解析を反映した新規除草剤候補となる基本化合物を見出すことを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • ゲノム情報から抽出したHIS1および関連遺伝子 (HSL遺伝子) の配列を活用し、ゲノム編集等の新たな育種技術を利用して、除草剤抵抗性を改変・強化したイネを作出した。
  • 交配育種により、HIS1遺伝子を導入した除草剤抵抗性の多収イネを作出した。
  • 4-HPPD阻害剤感受性の多収品種に対して、除草剤反応性の違いを利用して、前作品種の脱粒による異品種混入対策と安定栽培のそれぞれに有効な除草剤処理体系を策定した。
  • HIS1タンパク阻害活性を持つ除草剤候補化合物を新たに見出した。

公表した主な特許・論文

  • Maeda, H. et al. A rice gene that confers broad-spectrum resistance to β-triketone herbicides. Science 365(6541), 393-396 (2019).

3 今後の展開方向

  • 除草剤抵抗性と他の有用特性を集積して、安定栽培が望める優良多収イネ品種を育成する。
  • HIS1遺伝子およびHSL遺伝子の機能解析結果を活用して、薬剤選択性が改変あるいは抵抗性が強化された変異遺伝子の作出を進める。
  • 効果や使用量を実用化レベルまで改良することを目標に、新たな除草剤候補化合物の合成と除草活性の評価を進める。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) には、改変HIS1HSL遺伝子により特定の除草剤抵抗性が向上したイネ系統を育成する。
  • 5年後 (2024年度) には、除草剤抵抗性かつ耐病性等に優れる多収イネ新品種を開発する。
  • 最終的には、HIS1タンパク阻害効果を有する新規除草剤を開発し、除草剤抵抗性イネと適切な除草剤利用により、農業の生産性向上に貢献する。

4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 除草剤抵抗性多収イネとそれに適した除草剤施用体系を導入することで、飼料用等多収イネ栽培が促進され遊休水田の減少や飼料自給率の向上が期待できる。多様な薬剤選択性を持つ除草剤抵抗性強化イネの導入により、栽培圃場の雑草発生状況に応じた選択的除草が可能になる等、稲作の生産性向上が期待される。また、新規除草剤は百億円単位での経済効果が見込まれる。
  • 水田の維持により、農地や農村景観の保全につながる他、洪水防止等水田の多面的機能の維持に貢献できる。稲作の生産性向上により、持続的な生産体制が構築され、主食糧を安定的に供給できる。

除草剤抵抗性遺伝子HIS1ゲノム情報を使ったイネ育種・生産システムと新規創薬への展開

問い合わせ先 : 農研機構 次世代作物開発研究センター TEL029-838-7404