生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

革新的技術による無花粉スギ苗木生産の効率化・省力化と無花粉スギ品種の拡大

年度

2020

ステージ

開発研究

分野

林業・林産-育種

適応地域

全国 (スギ林業地域)

キーワード

スギ、花粉発生源対策、無花粉リソース、種子生産、苗木生産

課題番号 29013C
研究グループ (地独) 青森県産業技術センター林業研究所、山形県森林研究研修センター、(公財) 東京都農林水産振興財団東京都農林総合研究センター、神奈川県自然環境保全センター、富山県農林水産総合技術センター森林研究所、静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター
研究総括者 国立研究開発法人森林研究/整備機構森林総合研究所林木育種センター 高橋 誠
研究タイプ 現場ニーズ対応型 Aタイプ
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 革新的技術による無花粉スギ苗木生産の効率化・省力化と無花粉スギ品種の拡大 (PDF:642.2 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

社会問題となっているスギ花粉症の解決に向けて、林野庁が推進している花粉発生源対策の中で花粉症対策苗木の一つとして位置づけられている無花粉スギ苗木の早期の普及に資する技術を開発することを目的とする。このため、種子生産の増大、苗木生産段階での無花粉スギ苗木スクリーニングの効率化、あるいはそれらの省力化・省コスト化のための技術開発及び無花粉スギリソースを拡大することを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 根域制限栽培法により採種園の早期成園化 (2年目で従来のミニチュア採種園 (10年生) の単位面積生産量の3倍以上) と省力化を進め、単位面積あたりの種子生産量が3倍以上に増大することを確認。
  • ジベレリンの複数回処理によって雌花と雄花の着花量をそれぞれ平均で1.8倍、2.3倍に高まることを確認。
  • 積雪を利用して交配母樹を埋雪して開花時期を調節することにより、多雪地域における交配を省コスト化。
  • 休耕田を活用した無花粉スギの水耕栽培により得苗率は8割以上、植栽後活着率は約9割以上。
  • 無花粉スギ苗木のスクリーニングに用いる用具の改良や、苗木を生分解性ポットを活用したコンテナ苗で育成すること等により2割以上の効率化を達成。

公表した主な特許・品種・論文

  • 無花粉スギ品種「三月晴不稔1号」(2019年2月6日認定)
    (申請者 : 静岡県、神奈川県、東京都、富山県、森林総合研究所林木育種センター)
  • 無花粉スギ品種「三月晴不稔2号」(2019年11月19日認定)
    (申請者 : 静岡県、神奈川県、東京都、富山県、森林総合研究所林木育種センター)
  • 無花粉スギ品種「心晴れ不稔1号」(2020年2月28日認定)
    (申請者 : 東京都、富山県、神奈川県、静岡県、森林総合研究所林木育種センター)

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 種子生産については、スギにおける根域制限栽培法を確立するとともに、ジベレリンの複数回処理による着花促進の有効性及び母樹埋雪法により多雪地域における種子生産の省コスト化を図れることを確認。
  • 苗木生産については、休耕田を活用した無花粉スギ苗木の水耕栽培技術及び効率的な無花粉苗木のスクリーニング技術を確立。
  • 品種開発については、初期成長、材質、さし木発根性等を調査し、新たな無花粉スギ品種3系統を開発。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) は、根域制限栽培法、複数回ジベレリン処理、効率的なスクリーニング手法をそれぞれ2県以上で実用化。多様な無花粉スギ品種の開発に向けた調査・研究を継続。
  • 5年後 (2024年度) は、休耕田を活用した水耕栽培技術を2県以上で実用化。また、新たな無花粉スギ品種を開発。
  • 最終的には、各地において無花粉スギの苗木生産の普及が進むよう貢献。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 本プロジェクトで開発した技術・品種の活用によって無花粉スギ苗木の普及が進むことにより、花粉症による経済的損失の低減に貢献することが期待。
  • 花粉を飛散しない無花粉スギ品種の植栽が進むことにより、春先のスギ花粉の飛散量が軽減され、花粉症の改善や健康的国民生活の確保への貢献が期待。

革新的技術による無花粉スギ苗木生産の効率化・省力化と無花粉スギ品種の拡大

問い合わせ先 : 森林総合研究所林木育種センター TEL 0294-39-7000