生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

土壌凍結深制御手法の高度化・理化学性改善技術への拡張と情報システムの社会実装

年度

2020

ステージ

開発研究

分野

農業-畑作物

適応地域

北海道

キーワード

"ジャガイモ、タマネギ、テンサイ、トウモロコシ" 、土壌凍結、積雪、環境制御、農業情報

課題番号 29017C
研究グループ 農研機構北海道農業研究センター、道総研北見農業試験場・十勝農業試験場、きたみらい農業協同組合 十勝農業協同組合連合会
研究総括者 農研機構北海道農業研究センター 廣田 知良
研究タイプ 現場ニーズ対応 Aタイプ
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 土壌凍結深制御手法の高度化・理化学性改善技術への拡張と情報システムの社会実装 (PDF:873.6 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

雪割り (圃場内機械除雪) による土壌凍結深制御手法は、十勝地方での野良イモ対策として広く普及した。一方、オホーツク地方では、本手法が砕土性向上、土壌窒素の溶脱抑制等の土壌理化学性改善を目的とした技術へ拡張されつつある。さらに、シストセンチュウ対策としては、土壌移動リスクが少ない雪踏み (圃場内機械圧雪) による野良イモ対策が早急に望まれている。そこで、これらの課題に対応するために、土壌凍結深制御技術の拡張を図り、より高度化した情報システムを構築し、生産現場に普及・定着させる。

2 研究の主要な成果

  • 雪踏み過程における土壌凍結深推定モデルを開発した。ユーザーの実測が必要だった雪踏み後の積雪深を自動計算し、最大土壌凍結深の推定精度も、よりモデル化が容易な雪割り過程と同等の7cmとなった。
  • 輪作体系でジャガイモ収穫後に作付けされることが多い秋播小麦について、積雪深20cm未満での雪踏み作業を避けて茎葉の損傷を防止すれば、小麦収量の確保と野良イモ対策が両立できることを明らかにした。
  • 野良イモ対策、タマネギ、テンサイ等の各種畑作物、並びに、飼料用トウモロコシの増収や作業性改善を効果的に実施するための雪踏み、雪割りによる土壌凍結深制御の技術マニュアルを作成し、生産現場へ普及した。
  • 雪踏みによる土壌凍結深制御の情報システムは、雪割りと共にオホーツクと十勝の農協の営農情報システムに搭載し、マニュアルを整備した。これにより両地域で生産者自ら土壌凍結深制御が可能な体制とした。

公表した主な特許・品種・論文

  • S. Shimoda, and T. Hirota, Planned snow compaction approach (yuki-fumi) contributes toward balancing wheat yield and the frost-kill of unharvested potato tubers. Agri. For. Meteorol. 262, 361-369 (2018)
  • 広田知良,北海道における土壌凍結の農業への利活用を支えた観測手法と観測結果, 土壌の物理性142, 13-24 (2019)

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 土壌凍結深制御の情報システムは、十勝地方では十勝農協連により管内の各JAに、オホーツクでは当初計画のJAきたみらいに加えオホーツク農協連によりオホーツク全体を対象へと拡張される計画である。
  • 雪割り・雪踏みの実施面積は十勝地方の5300haに加え、オホーツク地方では3600haに達し、当初の目標以上の普及がプロジェクト期間内に図られた。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) は、多雪・非土壌凍結地帯 (道央、道北など) における適用地域の拡大を目指す。
  • 5年後 (2024年度) は、病害虫対策のような土壌凍結深制御の適用技術の拡張を図る。
  • 最終的には、全道における土壌凍結深制御の拡大と技術拡張を図る。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 野良イモ対策では、夏期農繁期の人力での作業から冬の農閑期の機械作業へ移行でき、作業時間は人力作業の数十時間/haから1~数時間/ha作業と大幅に減少する。その費用削減効果は数万~10万円/haとなる。畑地の生産力向上では、砕土性向上による作業性改善で数千円/haの節減、作物の増収効果は移植テンサイ、ダイズ等の畑作物で数万円/ha、タマネギで20万円/ha以上の増益見込みとなる。農家1経営体当りで100万~200万円程度の増益、道東全体では数億~10億円以上の経済効果が見込まれる。
  • 我が国のジャガイモ、タマネギ等の生産量の圧倒的シェアを占めている北海道の大規模畑作の生産性をより強化するとともに、化学農薬の使用を削減して安全・安心な食料の安定的供給が図られることで、国民の食生活に寄与できる。

土壌凍結深制御手法の高度化・理化学性改善技術への拡張と情報システムの社会実装

問い合わせ先 : 農研機構北海道農業研究センター TEL 011-857-9212