生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

産地崩壊の危機! リスク軽減によるサトイモ疫病総合防除対策技術確立試験

年度

2020

ステージ

開発研究

分野

農業-病害虫

適応地域

全国

キーワード

サトイモ、疫病、総合防除、LAMP法、PCR法

課題番号 29018C
研究グループ 愛媛県農林水産研究所、宮崎県総合農業試験場、鹿児島県農業開発総合センター、岐阜大学、農研機構 西日本農業研究センター
研究総括者 愛媛県農林水産研究所 戸井 康雄
研究タイプ 現場ニーズ対応型
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 産地崩壊の危機! リスク軽減によるサトイモ疫病総合防除対策技術確立試験 (PDF:683.8 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

2015年8月の台風通過後に愛媛県、宮崎県および鹿児島県のサトイモ産地で疫病が多発し甚大な被害となった。そこで、サトイモ疫病による収量に影響する被害を少なくするために、(1) サトイモ疫病菌を迅速かつ簡易に検定できる遺伝子診断法を開発、(2) サトイモ疫病の総合防除技術の開発、(3) サトイモ収量を確保することを目標とする。

2 研究の主要な成果

  • サトイモ疫病菌を特異的に検出する遺伝子診断法 (LAMP法やPCR法、リアルタイムPCR法) を開発し、植物体や土壌からの菌の検出が可能になった。
  • 本病は土壌や種イモを介して伝染するという伝染環を解明するとともに、国内の産地から産地へは種イモや土壌等により伝染しているなど伝染経路が明らかになった。
  • サトイモ疫病の生態、および初発生時期や拡大時期の環境要因を明らかにした。また、種イモ消毒やほ場の伝染源対策、薬剤の効率的防除の総合防除技術を開発した。
  • 総合防除技術を活用することにより、単位面積当たり収量は、サトイモ疫病が大規模に発生する前年 (平成25年) の水準に愛媛県及び鹿児島県では回復し、宮崎県では徐々に回復傾向にある。
  • 開発した総合防除技術は、技術員向けおよび生産者向けの「サトイモ疫病対策マニュアル (2020年版) (技術員向けマニュアル)」にまとめ、サトイモ生産・栽培指導に係る関係機関に配布しweb公開した。
    https://www.pref.ehime.jp/h35118/2406/byocyubojo/htm/satoimoekibyoutaisaku.html

公表した主な特許・品種・論文

  • Feng,W.et al. A simple loop-mediated isothermal amplification assay to detect Phytophthora colocasiae in infected taro plants. Journal of General Plant Pathology, 85, 337-346 (2019)

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 開発した総合防除対策技術を、本病が発生する各都道府県の研究者や指導員を通じて生産者に周知し、実践を推進する。
  • 本研究で得られた成果をもとに、種イモ消毒剤の農薬登録拡大を支援する試験を実施し、登録拡大後に対策マニュアルを更新する。
  • 疫病抵抗性素材等を利用した病害防除技術を開発する。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) は、新たに登録される薬剤を含めた防除体系試験を実施する。
  • 5年後 (2024年度) は、適用拡大された種イモ消毒剤を活用し、栽培期間を通した防除体系を確立する。
  • 最終的には、発生生態の知見や栽培管理技術、薬剤防除技術を活用した総合防除対策により、サトイモの安定生産を図る。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 本病による甚大な被害により収量が40%減収することから、本課題で得られた総合防除技術を活用し収量に影響する被害を最小限に抑えることにより、113億円の経済効果が期待できる。
  • サトイモ疫病対策による生産体制の強化により、国産サトイモの安定生産及び安定供給が期待できる。

産地崩壊の危機! リスク軽減によるサトイモ疫病総合防除対策技術確立試験

問い合わせ先 : 愛媛県農林水産研究所 TEL 089-993-2020