年度 2020 ステージ 開発研究 分野 農業-病害虫 適応地域 全国 キーワード ネギ、黒腐菌核病、ネダニ、薬剤防除体系、耕種的防除技術 |
課題番号 | 29020C |
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研究グループ | 農研機構中央農業研究センター、埼玉県農業技術研究センター、静岡県農林技術研究所、鳥取県園芸試験場、 横浜植木株式会社 |
研究総括者 | 農研機構中央農業研究センター 宮田 伸一 |
研究タイプ | 現場ニーズ対応型 Bタイプ |
研究期間 | 平成29年~令和元年 (3年間) |
PDF版 | ほ場診断に基づくネギ黒腐菌核病・ネダニ等の重要土壌病害虫の包括的防除技術の開発 (PDF:663.9 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
近年、白ネギの土寄せ栽培において難防除土壌病害虫であるネギ黒腐菌核病およびネダニ類の発生被害が全国的に深刻化してきているため、効果的な防除体系の確立を目的とする。このため、本病害虫にそれぞれ有効な新規薬剤を2種類以上明らかにし効果的な薬剤防除体系を提案するとともに、薬剤防除の効果を補完する耕種的防除技術として太陽熱や土壌改良資材等を利用した防除技術の開発を行い、関東・東海・中国地域のネギ主要産地における新たな防除体系の確立を達成目標とする。
2 研究の主要な成果
- ネギ黒腐菌核病の防除に有効な薬剤として6剤を新たに選抜した。うち2剤 (ピラジフルミド、フルジオキソニル) は適用拡大登録も済んでおり、秋冬ネギの生育期防除の薬剤選択肢が拡大した。
- 太陽熱土壌消毒による菌核不活化 (7~8月における2週間の農ポリ被覆処理) や、罹病ネギ残さの付着菌核不活化処理 (残さを石灰窒素等と積層し6週間の農ポリ被覆処理) 等、耕種的防除技術を開発した。
- ネギ黒腐菌核病菌について、わが国で発生していたがこれまで検出できなかった病原菌株も高い精度で検出できる診断用PCRプライマーを開発し、正確・迅速な診断技術を確立した。
- ネダニ類に防除効果のある薬剤として3剤を新たに選抜し、ほ場での防除効果を確認した。また、寒冷期おける2回程度の耕耘によってネダニ生存数を大幅に低減できることを明らかにした。
公表した主な特許・品種・論文
- 伊代住浩幸他.プラスティックボトル内で行う模擬的な太陽熱土壌消毒によるネギ黒腐菌核病菌菌核の死滅条件の検討.関西病虫害研究会報62, 1-6 (2020).
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
- ネギ黒腐菌核病の生育期防除体系 (ピラジフルミドの定植時処理+他系統剤の土寄せ時1~2回施用) の構築をさらに進め、耕種的防除技術とともに総合防除技術マニュアルを作成する。
- 新開発プライマーを用いた診断技術について知的財産化の手続きを行うとともに、生産現場において本病の発生初期を的確に把握し、迅速に適切な防除指導ができるよう指導機関等への普及を図る。
【今後の開発・普及目標】
- 2年後 (2021年度) は、主要なネギ主産県へ総合防除マニュアルを普及予定。
- 5年後 (2024年度) は、新たに登録される薬剤を加えた改良マニュアルの主要生産地域への普及を予定。
- 最終的には、全国のネギ生産地域への普及により、秋冬ネギの安定生産を支える。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
- ネギ黒腐菌核病が全国のネギ生産地の約1割のほ場で発生し、その減収率を1割と見積もると、新たな防除技術によって減収を3割改善できれば、約5億円の生産額の向上が見込まれる。
- 本研究により開発された効率的な防除技術により土壌くん蒸剤の使用回数が低減でき、生産者の労力的・経済的な負担の軽減と、都市近郊農地の環境負荷軽減につながる。
問い合わせ先 : 農研機構中央農業研究センター TEL 029-838-8885