生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

日本海側砂丘地・気候におけるICTを活用した高品質小麦の安定・省力生産技術の開発

年度

2020

ステージ

開発研究

分野

農業-畑作物

適応地域

全国・北陸

キーワード

小麦、砂丘畑地、生育診断、NDVI、タンパク質含有率

課題番号 29021C
研究グループ 農研機構中央農業研究センター、新潟県農業総合研究所、新潟県新潟農業普及指導センター、株式会社新潟クボタ、丸榮製粉株式会社、マルエイファーム株式会社
研究総括者 農研機構中央農業研究センター 関 正裕
研究タイプ 現場ニーズ対応型 Bタイプ
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 日本海側砂丘地・気候におけるICTを活用した高品質小麦の安定・省力生産技術の開発 (PDF:513.9 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

日本海側砂丘畑地のパン用小麦栽培は耕作放棄地対策と地場製粉業者の要望で始まったが、品質 (灰分含有量・タンパク質含有量) のバラツキが問題であった。そこで、品質安定化のため生育・収穫情報を利用し高品質小麦栽培技術を確立する。

多雪である日本海側の気候と砂丘畑地のパン用小麦において、圃場ごとに得られた生育情報により追肥量をコントロールする施肥診断技術および追肥作業を省力化する技術を開発し、問題となっている灰分含有率を上げずに実需の求めるタンパク質含有率12%にする。

2 研究の主要な成果

  • NDVI値などを利用した追肥診断術を開発し、技術導入前に比較してタンパク質含有率が目標としていた12%に向上。
    NDVI 代表的な植生指標。植物による光の反射の特徴を利用してNDVI値が+1に近いほど、植生が多い結果となる。
  • パン用小麦の省力栽培体系技術を開発し、追肥体系および液肥による省力追肥栽培体系により追肥回数が従来の3/5に減少。
  • 北陸地域の砂丘畑地でパン用小麦品種「夏黄金」は「ゆきちから」と比較して2~3日早生で収量は同等以上、タンパク質含有率は同等。
  • 本技術により収量は3年間平均で従来の160%、タンパク質含有率が0.8ポイント増加。約60ha規模の生産法人が新技術を導入し砂丘畑で6haの小麦を栽培する場合、所得が295万円増加。

公表した主な特許・品種・論文

  • 島崎由美.新潟県の砂丘地において,葉面散布追肥を取り入れた省力栽培がパン用コムギ「ゆきちから」の収量・子実タンパク質含有率に及ぼす影響.北陸作物学会報54, 32-37 (2019).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 開花期の赤かび病防除と開花期追肥を同時に行うため赤かび病防除薬液に尿素水溶液を混合する作業の統合による作業合理化を実現。すでにいくつかの生産者で取り組みを開始。
  • 新品種「夏黄金」を産地銘柄品種に申請準備中であることから、普及への取り組み。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) は、小麦の省力施肥体系を砂丘畑地以外のパン用小麦での本技術の導入を進める。
  • 5年後 (2024年度) は、「ゆきちから」から「夏黄金」へ品種転換する。
  • 最終的には、砂丘畑地の耕作放棄地防止、高品質パン用小麦の安定生産の実現。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 新潟県だけでパン用小麦は 1,000t 程度の潜在的需要があると予測され、製品化すれば約7億円の経済効果が見込まれ、他の日本海側地域にも波及すればさらに大きな経済効果が見込まれる。
  • 日本海側砂丘畑地における土壌飛砂は主に季節風の影響が大きい冬期に多く、飛砂防止対策が必要で、冬期の小麦栽培により飛砂の被害も軽減でき、生活の環境改善への貢献が期待できる。

日本海側砂丘地・気候におけるICTを活用した高品質小麦の安定・省力生産技術の開発

問い合わせ先 : 農研機構中央農業研究センター TEL 025-526-3215