生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

飼料脂肪酸組成の最適化による養殖ブリの生産効率改善と高付加価値化

年度

2020

ステージ

開発研究

分野

水産-養殖

適応地域

東海、中四国、九州

キーワード

ブリ、飼料、脂質代謝、脂肪酸、ブランド養殖魚

課題番号 29023C
研究グループ 国立大学法人高知大学、三重県尾鷲水産研究所、フィード・ワン株式会社、尾鷲物産株式会社
研究総括者 国立大学法人高知大学深田陽久
研究タイプ 現場ニーズ対応型 Bタイプ
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 飼料脂肪酸組成の最適化による養殖ブリの生産効率改善と高付加価値化 (PDF:928.4 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

ブリ養殖業の高収益化には、国内消費と海外輸出の増加が必要である。しかし、販売においてサーモンだけでなく、海外産養殖ヒラマサ等の競合する魚種も増えつつある。ブリには、ヒトの健康に良いドコサヘキサエン酸 (DHA) が多いことが知られており、この点において他の魚種よりも優れている。そこで本研究では、飼料コストを節約し、ブリの長所であるDHAの含有量を増やして、国際的に競争力のある養殖ブリ生産を可能にする。

2 研究の主要な成果

  • ブリの周年にわたる脂質代謝酵素 (脂質異化・脂質同化) 活性の変化を解明。
  • ブリにおける脂質の利用方法 (エネルギー源として利用または脂肪として蓄積) が水温によって変化することを明らかにし、開発した飼料を用いるのに適した時期を特定。
  • 水温上昇期に適した脂肪酸組成を特定し、屋内試験にて増肉コストを従来の80%に削減。
  • 水温下降期に適した脂肪酸組成を特定し、増肉係数を従来比5~7%改善と身の高DHA化 (3%以上) を達成。

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 2歳魚における水温低下時・低水温期の飼料はすでに実用化されており、生産現場に導入されている。
  • 本技術の導入により、身のDHA含量を高めたブリを安定して生産できるようになった。
  • 生産されたブリは、「プレミアムDHAブリ」として 尾鷲物産(株) から、「尾鷲のトロぶり」としてスシローにて販売された。
  • 今後も本技術を活用し、ブランド養殖魚としての販売を継続する。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) には、水温下降時 (1歳魚) における研究成果を普及するため、学会での発表・論文発表を行う。また、水温上昇期 (1歳魚) 用飼料の実証試験を実施する。
  • 5年後 (2024年度) には、多くの飼料会社 (2社以上) の製品に反映させる。
  • 最終的 (2026年度) には、水温上昇期 (2歳魚) 用飼料の開発も行い、ブリの全生産期間 (約2年間) における飼料脂肪酸組成を最適化する。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 人間の健康に寄与するDHAを多く含むブリの特色を伸ばし、ブランド魚としての生産・販売を開始した。その売価は、従来のブリと比べて20%高く、水産業者の増益に繋がっている。
  • 本課題で開発をしたブランド養殖魚は、健康に寄与するDHA含量が、通常のブリの2倍近くあり、クロマグロのトロよりも多い。高DHA化によって、消費者の健康志向の高まりに合った魚を供給することが可能になった。

飼料脂肪酸組成の最適化による養殖ブリの生産効率改善と高付加価値化

問い合わせ先 : 高知大学 (深田) TEL 088-864-5156