生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

養殖業者や流通業者でもできる簡便な魚類寄生粘液胞子虫病の防除法の開発

年度

2020

ステージ

開発研究

分野

水産-養殖

適応地域

全国

キーワード

マダイ・トラフグ・ヒラメ・クロマグロ、粘液胞子虫、食中毒、感染防除、陸上養殖

課題番号 29025C
研究グループ 愛媛県農林水産研究センター、大分県農林水産研究指導センター、近畿大学、水産研究・教育機構増養殖研究所
研究総括者 岡山理科大学獣医学部 横山 博
研究タイプ 重要施策対応型
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 養殖業者や流通業者でもできる簡便な魚類寄生粘液胞子虫病の防除法の開発 (PDF:841.7 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

粘液胞子虫類は、養殖場で魚類を大量死させたり飲食店で人間の食中毒の原因になるなど、水産の生産・流通現場で深刻な問題になっている。本研究では、特に被害を与えている4種類の疾病について、魚体への感染時期と場所を特定し、駆虫効果のある薬剤や感染防除効果のある飼育用水の処理条件を明らかにする。各粘液胞子虫病の防除対策が養殖業者や流通業者に普及することで、被害が1割程度にまで低減し、養殖業の経営安定化に貢献すると同時に、食の安全・安心が確保されることを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • マダイの心臓ヘネガヤ症原因種 Henneguya pagri 、フグ目魚類の粘液胞子虫性やせ病原因種 Enteromyxum leeiSphaerospora fugu 、メジマグロの筋肉クドア症原因種 Kudoa hexapunctata の感染時期と場所を特定した。
  • K. hexapunctata とヒラメの筋肉クドア症原因種 K. septempunctata の胞子を in vitro で殺虫する効果を有する薬剤を見出し、一部は実験魚へ経口投与する in vivo 実証試験でも寄生率の低減効果がみられた。
  • H. pagriE. leei については、飼育用水の砂ろ過と紫外線処理により感染防除できることが示され、陸上の飼育施設では寄生を防ぐことが可能であった。
  • 上記の主要4種類の疾病に対して、I) 感染を回避する養殖プログラム、II) 有効な駆虫薬を用いた化学療法、III) 用水処理による感染防除のいずれか、もしくはそれらを組み合わせた実用的な対策ガイドラインを作成した。

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 主要4種類の疾病に対して作成した対策ガイドラインの積極的な活用を目指して、現場へ普及に取り組む。
  • 陸上飼育施設における砂ろ過・紫外線照射の殺虫効果が明らかになったことから、既存施設については有効照射量で処理するよう指導、不備施設については処理装置を新規に導入するよう指導することを目指す。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) は、すべての陸上飼育施設で飼育用水処理を徹底させて、未感染魚を作出する。
  • 5年後 (2024年度) は、ヒラメの K. septempunctata の駆虫効果を有する薬剤を開発して、登録申請する。
  • 最終的には、日本国内で生産されるすべての養殖魚を完全に粘液胞子虫未感染とすることを目指す。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 上記の粘液胞子虫病が水産業の生産・流通現場に与える被害額は約5億円と見積もられていた。しかし、本研究で得られた、感染回避養殖プログラム、近い将来実用化が見込まれる化学療法、用水処理による感染防除などの対策を組み合わせて用いれば、被害を1割程度にまで低減できると期待される。
  • 本研究の成果を活用した養殖魚の生産・普及によって、もともと供給や品質が安定していた養殖魚の安全性について信頼性が増す。さらに、食中毒のリスクが減ることで食品衛生上の不安がなくなり、「食の安全・安心」が確保され、国民生活の向上および社会経済の安定化にも貢献する。

養殖業者や流通業者でもできる簡便な魚類寄生粘液胞子虫病の防除法の開発

問い合わせ先 : 岡山理科大学獣医学部 横山 博 TEL 0898-52-9083