生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

活性汚泥モデルと新規窒素除去反応アナモックスの利用による畜産廃水処理技術の高度化

年度2019ステージ基礎研究分野畜産 (畜産環境)適応地域全国

キーワード豚、畜産廃水、活性汚泥処理、窒素、アナモックス

課題番号 28008A
研究グループ 農研機構 畜産研究部門, 茨城県畜産センター, 静岡県畜産技術研究所中小家畜研究センター
研究総括者 農研機構 畜産研究部門 和木 美代子
研究タイプ 一般型 Aタイプ
研究期間 平成28年~30年 (3年間)
PDF版 活性汚泥モデルと新規窒素除去反応アナモックスの利用による畜産廃水処理技術の高度化 (PDF:736.5 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

畜産廃水処理において、水質汚濁防止法の「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物および硝酸化合物」における暫定基準値の強化への対応は急務である。本課題では、中小規模の養豚農家で稼働している活性汚泥処理施設を対象に窒素除去能を最大限に発揮させ、省コスト化を実現できる最適な運転条件を明らかにする。さらに窒素除去が不十分な場合には、活性汚泥処理後の高度処理として、アナモックス菌のアナモックス反応による窒素除去能に優れた処理装置を開発する。

注) アナモックス (anaerobic ammonium oxidation : 嫌気性アンモニア酸化)

2 研究の主要な成果

  • 連続曝気の活性汚泥処理において、曝気槽の溶存酸素濃度を0.03~0.07mg/Lの低い状態に保持すると、85~96%の効率の良い窒素除去ができることを明らかにした。
  • 活性汚泥処理だけでは窒素除去が不十分な場合の後処理として、陽イオン交換能をもつゼオライトを微生物 (アナモックス菌体) 付着担体に使用したアナモックス リアクター (100mL) を考案した。
  • アナモックス菌が自生する養豚廃水処理施設の曝気槽内の溶存酸素濃度、pH、無機態窒素濃度等を明らかにした。溶存酸素濃度を0.3mg/L程度に保持することが、アナモックス菌自生のために最重要であることを見出した。

公表した主な特許・論文

  • Suto R. et al. Anammox biofilm in activated-sludge swine wastewater treatment plants. Chemosphere. 8(167), 300-307 (2017)
  • Waki M. et al. Treatment of swine wastewater in continuous activated sludge systems under different dissolved oxygen conditions: reactor operation and evaluation using modelling. Bioresource Technology, 250, 574-582 (2018)
  • Waki M. et al. Tolerance of anammox reactor packed with zeolite to partial supply of nitrite or ammonium using purified livestock wastewater Environmental Technology. in press

3 今後の展開方向

  • 実規模活性汚泥処理施設の曝気槽で溶存酸素濃度を制御して窒素除去運転を行い、その効果を検証する。
  • 活性汚泥処理だけでは窒素除去が不十分な中小規模の養豚農家に適した装置仕様を定めるため、ゼオライトを用いたアナモックス リアクターを設計・製作し、さらに容量のスケールアップを図る。

【今後の開発目標】

  • 2年後 (2020年度) は、実規模活性汚泥処理槽 (約50m3) の、溶存酸素濃度制御効果の検証を行う。また、その処理水を対象としたアナモックス リアクターのプロトタイプを作製する。
  • 5年後 (2023年度) は、複数の中小規模養豚農家での処理水中の窒素除去技術の実証試験を行う。
  • 最終的には、養豚農家の活性汚泥施設の処理への実用化・普及を図る。

4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献

  • 畜産廃水処理の窒素除去技術開発により、養豚農家の環境規制強化への対応が可能となる。
  • 活性汚泥曝気槽の過剰曝気の防止により、養豚農家の汚水処理の省力・低コスト化が期待される。
  • 畜産排せつ物処理の負担軽減による養豚経営の強化により、国産畜産物の安定供給へ貢献する。
  • 畜産経営からの環境への窒素流出の削減により、水環境の窒素汚染の低減化へ貢献する。

活性汚泥モデルと新規窒素除去反応アナモックスの利用による畜産廃水処理技術の高度化

問い合わせ先 : 農研機構 畜産研究部門 TEL 029-838-8677