生物系特定産業技術研究支援センター

イノベーション創出強化研究推進事業

超過降雨に対応した農業地域の洪水被害を軽減する減災支援技術の開発

年度

2020

ステージ

開発研究

分野

農業-農業水利

適応地域

全国

キーワード

農業排水機場、支援システム、浸水被害、リアルタイム予測、AI

課題番号 29016C
研究グループ 新潟大学、東京大学、国際航業、応用技術
研究総括者 農研機構農村工学研究部門 吉永 育生
研究タイプ 現場ニーズ対応型
研究期間 平成29年~令和元年 (3年間)
PDF版 超過降雨に対応した農業地域の洪水被害を軽減する減災支援技術の開発 (PDF:766.0 KB)

1 研究の目的・終了時の達成目標

近年、増加傾向にある農業排水の計画を超える豪雨 (超過降雨) による洪水被害に対し、AIを活用したリアルタイムで排水機場等の水位を予測する技術等を開発し、効率的な排水管理を支援することで洪水被害を軽減と排水管理にかかる施設管理者の管理労力を軽減することを目的とする。

排水管理にかかる複数の水理モデル等を、施設管理者が簡便かつ一元的に利用できる、地域排水にかかる総合的な情報システムを構築することを達成目標とする。

2 研究の主要な成果

  • 排水機場の水位を観測水位、気象情報を元にAIによってリアルタイムで予測するモデルを開発した。過去の水位の変動パターンに基づいて、極めて高速に予測計算が可能である。
  • 網目のように広がる排水路の水位と、その氾濫をリアルタイムで計算できる排水解析モデルを開発した。離散化等の工夫によって高精度かつ短時間の予測計算が可能である。
  • 排水機場の点の水位を予測するモデルと、排水路等の面の水位を予測するモデルの、2つのリアルタイム予測結果をわかりやすく表示し、施設管理者のポンプ操作を支援するシステムを構築した。
  • 浸水被害の詳細な分析を目的とした内水氾濫解析モデルを開発し、水路改修の効果の検証等のシナリオ分析によって効果的な浸水被害対策手法を提案した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 木村匡臣他.低平農業地域における排水機場の予備運転による大雨時の内水氾濫被害軽減効果の検討、土木学会論文集B1(水工学), 75(2), I_1309-I_1314(2019).
  • 木村延明他.LSTMモデルを用いた低平地排水機場の水位予測、土木学会論文集B1(水工学), 75(2), I_139-I_144(2019).

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

  • 現地実証を継続し、豪雨時のシステム稼働状況の確認やモデルの予測結果の検証を行い、システムの改善を図る。既に運用されている、ため池防災支援システムとの連携を強化する。
  • 2つのリアルタイム予測モデルは、高精度化と汎用化を目指して、モデルの改善と初期条件等の入力データソフトの改善等を実施する。

【今後の開発・普及目標】

  • 2年後 (2021年度) は、ポンプ排水を実施している地区へシステムを導入する。
  • 5年後 (2024年度) は、リアルタイム予測モデルの高度化と、既に運用されているため池防災支援システムとの連携の強化により、システムの幅広い普及を目指す。
  • 最終的には、導入地区において災害の発生につながるような記録的な大雨 (50年確率降水量) による浸水被害の10%削減及び排水管理の簡略化による排水管理に要する労力の15%削減に資する。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 台風等による浸水範囲が減少することで、洪水被害が低減する。例えば2019年台風19号による農業関係被害額は3,400億円を超えており、被害低減による国民への波及効果は極めて大きい。
  • 施設管理者の担い手不足と高齢化が進行するなかで、排水管理にかかる技術的な支援を行うことで、ソフト面での国土強靭化に資する。

超過降雨に対応した農業地域の洪水被害を軽減する減災支援技術の開発

問い合わせ先 : 農研機構農村工学研究部門 吉永 育生 TEL 029-838-7567