農業機械の安全装備

刈払機

その1.トリガー式スロットルレバー

 刈払機は、スロットルレバーでエンジンの回転数を上げ、回転数が上がって遠心式のクラッチで動力がつながり、末端の刈刃の回転数が調節される構造です。刈払機の刈刃による傷害事故の多くは転倒やキックバックの際に発生しているといわれていますが、このようなトラブルが生じた場合、刈刃が高速で回転したままの状態になってしまうと大変危険です。
 トリガー式のスロットルレバー(図)は、レバーを握っている間は刈刃が回転し、放すとレバーが元の位置に戻ります。その結果、エンジン回転数もアイドリング状態まで下がってクラッチが切れ、動力が断たれた刈刃は惰性で回転するだけの状態になります。よって、手を放してもレバーが戻らないような細工は、厳禁です。

 
図 トリガー式スロットルの一例
その2.緊急離脱装置

 刈払作業中の安全性を確保するためには、転倒などのトラブルが発生したときに刈払機をいち早く身体から離してしまう方法も考えられます。
 「緊急離脱装置(図)」は、緊急時に、作業者が一動作で刈払機を身体から離すことのできる装置です。いざという時、落ち着いて素早い操作ができるように、普段から緊急離脱装置の使い方を練習しておきましょう。装置に不具合がないかという点検にもなります。


図1 緊急離脱装置の例(その1)

図2 緊急離脱装置の例(その2)
その3.刈刃カバー

 刈払機の刈刃は回転している時に危険なのは言うまでもないですが、回転していない時でも、接触すると怪我をする危険性があります。
 刈刃への不用意な接触による怪我を防止するために、刈払機の運搬時や保管時、または刈刃の交換時など、刈払作業を行わないときは、必ず刈刃カバーを装着しましょう。


図1 刈刃カバー

図2 刈刃への不用意な接触

図3 刈刃カバーの装着

図4 刈刃カバー装着後
その4.飛散物防護カバー

 刈払作業中、小石などの異物に刈刃が接触すると、異物や破損した刈刃の破片が飛散することがあります。JA共済連による分析では、飛散物による傷害は約2割を占めていました(※JA共済連「共済金支払データに基づく農作業事故の発生状況の分析について」R4.4)。そこで、飛散物から作業者を守るために、刈払機には飛散物防護カバーが装備されています。
 当たり前のことですが、カバーによって防護できる範囲が小さくなると、その分危険性は増してしまいます。ずらしたり、外したりせず、必ず正しい位置に取り付けておくのはもちろんのこと、破損した場合には、次の使用の前に新品と交換するにようにしましょう。作業前に破損していないか、十分確認することも忘れないでください。


図 飛散物防護カバー
その5.保護めがね

 飛散物が目に入ると、最悪の場合失明ということになりかねません。目の傷害事故防止には保護めがねの着用が一番の対策です。
 刈払作業時には必ず、飛散物に有効な「JIS T 8147」や「ANSI Z87.1」などの規格に適合した保護めがねを着用しましょう。普通のめがねでは強度等が足りず、目の保護にはなりませんので、十分な対策が必要です。


図 保護めがね
その6.刈刃

 刈払機用の刈刃には2枚刃、3枚刃、4枚刃、8枚刃、のこ刃、チップソー、ナイロンコードカッターなど、様々なものがあります。刈刃は刈払機の作業性や安全性において、最も重要な部品です。
 必ず取扱説明書の中に記載されている推奨刈刃を使用し、欠け、ひび割れ、曲がりなどがないこと、手回しして振れや異音がないことを確認しましょう(図1、2)。

 
図1 正常なチップソーの刃 図2 欠けたチップソーの刃
その7.エンジン停止スイッチ

 通常、刈払作業を終了する際には、スロットルレバーを操作してエンジンを低速状態にした後、停止スイッチでエンジンを停止させます。しかし、作業者が転倒した場合などの緊急時には、直ちに停止スイッチを操作することでエンジンを即座に停止させる必要があり、このため緊急時に備えて、停止スイッチはグリップのすぐそばに取り付けてあります。
 最近では停止スイッチに加え、エンジン部分に加速度センサーを搭載し、キックバックや転倒などで刈払機にある一定以上の衝撃(加速度)が加わった際、自動的にエンジンを停止させる安全装置を備えた刈払機が登場しています。正しい作業を心がけ、事故が発生しないよう注意することはもちろんですが、万が一に備え、こうした安全装置にも注目して選定しましょう。


図 エンジン停止スイッチの例