生物系特定産業技術研究支援センター

(27011B) 豚排泄物由来肥料を最大限活用した飼料用米の多収栽培技術の開発

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(発展融合ステージ)
実施期間 平成27~29年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
農研機構 東北農業研究センター、株式会社フリーデン、一関市北部農業技術開発センター、日本大学
作成者 農研機構 中央農業研究センター(元東北農業研究センター) 大平 陽一

1 研究の背景

主食用米の需要が減少する中、需要が見込まれる飼料用米の生産を進めることは、主食用米も含めた需給の安定、水田の維持、食料・飼料自給率向上など日本農業に求められる問題解決を図るうえで有効策の一つである。このような中、耕畜連携による堆肥活用や環境負荷軽減効果に係る検討が不十分であった。

2 研究の概要

豚ぷん堆肥を活用した土壌養分維持方法、堆肥化過程で発生するアンモニアガス回収による液体硫安の効率的製造方法、新規多収品種向けの肥培管理技術の開発によって、更なる多収や玄米タンパク質含有率向上を目指すとともに、耕畜連携資源循環システムによる温室効果ガス削減効果を明らかにする。

3 研究期間中の主要な成果

  • 豚排泄物由来堆肥(豚ぷん堆肥)の肥料的な活用のための施用方針を策定した。また、豚ぷん堆肥に多く含まれるリン酸、カリを化学肥料として無施用としても十分な収量を得られることを明らかにした。
  • 豚排泄物の堆肥化過程で回収したアンモニアガスを原料として製造した液体硫安を、飼料用米生産における追肥窒素として利用する際に、簡易かつ均一に水田に流入施肥を行う技術を開発した。
  • 飼料用米の生産において、耕畜連携による資源循環により、耕畜連携が無い場合と比較し、放出される温室効果ガスが二酸化炭素量として飼料用米生産量当たり最大40%削減可能なことを示した。

4 研究終了後の新たな研究成果

なし

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 工藤洋晃他.堆肥化処理装置で発生するアンモニアの回収による液体硫安の簡易なサイフォン方式による水田への流入施肥技術.日本土壌肥料学雑誌 88(5), 447-452 (2017).
  • 小野洋他.耕畜連携による温室効果ガス削減-飼料用米の実証試験-, フードシステム研究 24(3), 233-238(2017).
  • 大平陽一他.東北地域における多収性水稲品種「いわいだわら」の収量と玄米タンパク質含有率に及ぼす豚ぷん堆肥施用と窒素施用法の影響.農研機構研究報告 東北農業研究センター 120, 47-66 (2018).

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

岩手県一関市の約100haの水田で生産された飼料用米を養豚業の株式会社フリーデンが買い上げて給与しており、水田土壌のリン酸とカリを維持するために、株式会社フリーデンで製造された豚ぷん堆肥の適正量を飼料用米生産の水田に投入する上で活用されている。

(2) 実用化の達成要因

堆肥施用については、研究開始前から一関市の飼料用米生産農家と株式会社フリーデンとの間には耕畜連携の下地があり、一定程度豚ぷん堆肥施用が行われていたことから、当該成果の達成目標については明確かつ適切であり、スムーズに達成できた。

(3) 今後の開発・普及目標

液体硫安の製造と利用を実用化し、コストにも配慮した耕畜連携資源循環システムとして現地実証を行う必要がある。その上で、環境負荷軽減と持続的な飼料用米生産を両立するシステムの普及が期待される。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

飼料用米生産者の肥料費と養豚業者の飼料費が削減できる。飼料の50%を域内飼料用米とすることによる域内の生産誘発効果が、養豚生産1億円当たり3,320万円となることが見込まれる。耕畜連携の効果が十分に発揮されることで、水田ひいては国土の保全、食料・飼料自給率の向上、国民のニーズに沿った食肉の提供、環境負荷・温室効果ガスの低減に貢献できる。

(27011B) 豚排泄物由来肥料を最大限活用した飼料用米の多収栽培技術の開発