生物系特定産業技術研究支援センター
(26085C) 硬質小麦タマイズミの縞萎縮病と穂発芽抵抗性を強化した「スーパータマイズミ」の開発
事業名 | 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ) |
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実施期間 | 平成26~29年(4年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
三重県農業研究所、栃木県農業試験場、農研機構 次世代作物開発研究センター、三重県製粉工業協同組合、ヒガシマル醤油株式会社 |
作成者 | 三重県農業研究所 小倉 卓 |
1 研究の背景
タマイズミは国産唯一の白粒硬質小麦品種で、中華麺および醤油醸造用として品質が優れているが、コムギ縞萎縮病に罹病性で穂発芽の危険があった。このため、両障害に抵抗性を持つ小麦品種の育成が期待されていた。
2 研究の概要
タマイズミの長所を活かしつつ、DNAマーカー選抜法を用いてコムギ縞萎縮病と穂発芽抵抗性を強化したスーパータマイズミを品種化し、栃木県、三重県で普及させる。
3 研究期間中の主要な成果
- タマイズミと同等の品質、加工特性を持ち、コムギ縞萎縮病抵抗性の「タマイズミR」をスーパータマイズミとして品種化し、同病発生圃場で収量の向上を確認した。
- 栃木県、三重県で収量と品質を確保するための生育指標を明らかにし「栽培マニュアル」を作成した。
・三重県農業研究所ホームページ掲載 小麦「タマイズミR」栽培マニュアル Ver 1 (平成29年)
・栃木県農業試験場ホームページ掲載 タマイズミR栽培マニュアル - 三重県で奨励品種に採用し、平成30年産より産地品種銘柄が「タマイズミ群」で設定された。
4 研究終了後の新たな研究成果
Fuminori Kobayashi, Hisayo Kojima, Tsuyoshi Tanaka, Mika Saito, Chikako Kiribuchi-Otobe, Toshiki Nakamura (2020)Plant Breeding 139:93-106
(ゆめちからのもつコムギ縞萎縮病抵抗性のQTLの領域を、これまでの68.5Mbから27.3Mbに狭め、かつ、マーカー選抜において使い勝手のよい共優性マーカーを開発した。)
5 公表した主な特許・品種・論文
品種登録 第31563号 小麦品種「タマイズミR」が品種登録された(登録日 : H31年4月)
(出願者名 : 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター)
6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
- 令和元年播きから三重県内のタマイズミの作付けが「タマイズミR」に全面切替となった。(480ha)
- 岐阜県において実用規模の加工特性試験のため令和元年播きで試験栽培(8ha)を実施中。
(2) 実用化の達成要因
穂発芽抵抗性の大幅な向上は見られなかったものの、「タマイズミR」が、コムギ縞萎縮病抵抗性を持つことで同病発生地域でも生育が安定し、収量が大幅に増加することが確認されたこと。また、栽培マニュアルが作成されて安定生産のめどがついたことによる。
(3) 今後の開発・普及目標
岐阜県において品種の切替が実現した場合、三重県と合わせて870ha程度の栽培面積となる。今後、コムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子の存在する染色体領域を絞り込む研究が進めば、品質や栽培特性がより優れた品種開発が可能となる。
7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
- 導入が見込まれる三重県内の農業者の収益の増加、および安定供給が実現することによる小麦加工品の開発による経済効果が2億2千万円期待できる。
- 本研究の成果を活用した白粒硬質小麦が増産され、中華麺、しょうゆ、パン等の加工品が開発されることにより、今後、国民の国産を指向した豊かな食生活の提供に貢献できる。