生物系特定産業技術研究支援センター

(27026C) 肥育牛の飼料効率向上を実現する膨潤発酵飼料の低コスト化と給与効果の実証

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成27~29年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
山形県農業総合研究センター畜産試験場、農研機構 畜産研究部門、山形県農業共済組合、株式会社野川ファーム、秋田県畜産試験場、宮城県畜産試験場、みちのく村山農業協同組合、JA全農北日本くみあい飼料株式会社南東北支店
作成者 山形県農業総合研究センター畜産試験場 開発研究専門員 阿部 正博

1 研究の背景

肉用牛肥育経営においては、飼料費等の生産費増加により収益性が低下しており、飼料費の低減技術が切望されている。また、昨今の穀物需給を巡る世界情勢等を踏まえると飼料価格の高止まりが見込まれる。そこで、飼料用米等の国産飼料資源の利用拡大による飼料費低減と飼料自給率向上が期待されている。

2 研究の概要

飼料用米等の国産穀物を主原料として、膨潤発酵飼料の低コスト化調製技術を確立するとともに、低コスト膨潤発酵飼料の給与による飼料効率向上、胃液性状安定化、疾病低減効果を明らかにするため、実用規模の実証給与試験を通して肥育期間中の各種給与効果と飼料費低減を検証する。

3 研究期間中の主要な成果

  • 飼料用米 (40%) と複数穀類原料を混合・膨潤発酵処理した新たな膨潤発酵飼料を開発・商品化した。
  • 肉用牛肥育において、配合飼料の40%を膨潤発酵飼料に代替給与することにより、飼料効率が5%向上する効果を明らかにした。
  • 肉用牛肥育において、配合飼料の40%を膨潤発酵飼料に代替給与することにより、1頭当たり平均13~17千円、最大で46千円の飼料費低減効果を明らかにした。

4 研究終了後の新たな研究成果

該当なし

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 阿部正博他. 膨潤発酵飼料の給与が黒毛和種雌肥育牛の血液性状に及ぼす影響. 東北農業研究71, 47-48 (2018)
  • 阿部正博他. 膨潤発酵飼料の給与が黒毛和種雌肥育牛の発育性および飼料効率に及ぼす影響.山形県農業研究報告 11, 31-40 (2018)
  • 阿部正博他. 黒毛和種雌肥育牛における糞, 胃液性状と発育値および血液生化学検査値の関係. 肉用牛研究会報 104, 23-24 (2018)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 低コスト膨潤発酵飼料は商品名「ハイブリッド」として平成28年から販売開始。東北3県において7千袋以上を販売 (平成30年末)。
  • 令和元年度に東北農業試験研究推進会議の推薦を受けて、国の「最新農業技術・品種2020」の候補技術となった。研究成果名は「新たに開発した膨潤発酵飼料の黒毛和種雌肥育牛に対する給与効果」

(2) 実用化の達成要因

生産者、飼料会社、加工業、流通業、食品業界など、生産から消費者の口に運ぶまでを目的としているバリューチェーンのすべてのメンバー全面的な協力を得られたこと。

(3) 今後の開発・普及目標

新たな膨潤発酵飼料の開発による商品ラインナップの拡大と開発した低コスト膨潤発酵飼料 (商品名「ハイブリッド」) について、2020年1万袋、3~5年後に2万袋の普及を目指す。(東北地域)

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

飼料用米の新たな給与技術の普及・実用化、生産販売拡大による雇用の増加、開発した飼料の製造販売増による収益増加、規模拡大の誘導による畜産産出額の増加への貢献。

(27026C) 肥育牛の飼料効率向上を実現する膨潤発酵飼料の低コスト化と給与効果の実証