生物系特定産業技術研究支援センター
(24019) 地域特産化をめざした二枚貝垂下養殖システムの開発
事業名 | 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ) |
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実施期間 | 平成24~26年(3年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
水産研究・教育機構、千葉県水産総合研究センター、三重県水産研究所、兵庫県立農林水産技術総合センター、北海道立総合研究機構 |
作成者 | 水産研究・教育機構 水産工学研究所 日向野 純也 |
1 研究の背景
アサリは生産減少が激しいため、ホタテガイ・マガキのように垂下養殖を導入し、安定生産と高品質な生産物を確保する必要があるが、高品質な国産種苗の確保と高コストで重労働な養殖手法の改善が課題である。
2 研究の概要
アサリの垂下養殖に適した高品質種苗を低コストで確保するための手法開発、低コストで作業効率の高い垂下養殖用の容器・基質、施設の改良、必要な餌料環境、作業・効率性、コスト面から明らかにする。
3 研究期間中の主要な成果
- アサリ天然採苗手法として、網袋と人工芝で周辺より高密度に採苗できることを確認し、効率的な採苗法を開発した。人工種苗を成長促進させるための施肥方法および幼生飼育管理手法を開発した。
- アサリ垂下養殖施設として、いかだ式に加え延縄式を半沈下式にすることにより安定性が著しく向上することを確認した。養殖容器・基質として、網カゴと軽石を用いる方法を開発し、軽量化と効率化に成功した。
- 垂下養殖では干潟より著しく成長に優れることを示し、また寒冷地 (北海道) でも垂下養殖アサリが極めて良好な成長をすることを立証した。
4 研究終了後の新たな研究成果
アサリ天然発生稚貝の高密度分布域を探索し同稚貝を5~6月に砂と共に網袋の中に収納して約2ヶ月間干潟上に敷設すると高い生残率で殻長 約15mm まで成長し、養殖用種苗の効率的な確保手法を確立した。
5 公表した主な特許・品種・論文
- 長谷川夏樹他. アサリ垂下養殖における基質の検討.水産増殖 63(1), 9-16 (2015).
- 日向野純也他. アサリ垂下養殖の意義と普及に向けた課題(総論). 水産技術9(3), 87-100 (2017).
- 鳥羽光晴他. 東京湾盤洲干潟での網袋と人工芝のアサリ天然稚貝の捕集効果. 水産技術9(3), 101-112 (2017).
6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
- 網袋に基質 (砂利、ケアシェル) を入れたアサリの天然採苗方法を全国29都道府県に普及、公設試・自治体、漁協、企業も含めて大小の取り組みが拡大している。
- 垂下養殖だけでなく、設置した網袋の中でアサリを成長させて養殖を行ったり、産卵用の母貝として保護するために用いられる利用法が各地で実践されている。
(2) 実用化の達成要因
天然採苗や垂下養殖の手法について出張講義や現地指導を行ったほか、鳥羽磯部漁協への来訪団体に対して浦村アサリ研究会及び増養殖研究所が座学による講習と実地指導を行った。
(3) 今後の開発・普及目標
網袋によるアサリ天然採苗について、現在全国で約10万袋が設置されていると推定されるが、5年後に20万袋の普及を目指す。アサリ養殖生産量の100トン程度上乗せを目指す。
7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
地元で生産されるアサリに対する関心が高まり観光業等への連携が強まるとともに、小中学校の環境教育に体験学習として取り入れられ、海域環境や生態系への関心を高める上で貢献している。