生物系特定産業技術研究支援センター
(27025C) 道東海域の雑海藻を原料とした水産無脊椎動物用餌料の開発と利用
事業名 | 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ) |
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実施期間 | 平成27~29年(3年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
水産研究・教育機構、北海道立総合研究機構、北海道、北海道栽培漁業振興公社 |
作成者 | 水産研究・教育機構 北海道区水産研究所 鵜沼 辰哉 |
1 研究の背景
コンブ漁場では「雑海藻(スジメやアイヌワカメなど)が邪魔」、ウニ・アワビ種苗生産・養殖施設では磯焼け (岩礁域から大型海藻が消失する現象) などで「生海藻が足りない」 、ナマコ種苗生産施設では「専用の餌が未開発」という問題に直面している。
2 研究の概要
コンブ漁業の邪魔になっている雑海藻を集めて加工し、ウニ・アワビの種苗生産・養殖施設やナマコの種苗生産施設に餌料として供給する技術を開発する。
3 研究期間中の主要な成果
- 雑海藻の中でも、とくにスジメは水産無脊椎動物 (ウニ・アワビ・ナマコ) に対する餌料価値が高いことがわかった。
- スジメを湯通し処理してから痩せウニ (可食部である生殖巣が餌不足のために痩せ細ったウニ) に与えると、急速に身入りと色調が向上することがわかった (ただし苦味を生ずる)。
- 加工海藻を食べたウニの生殖巣が苦くなる仕組みを明らかにしたうえで、身入りと色調を向上させてから生野菜給餌により食味改善する飼育法 (生野菜併用法) を考案した。
4 研究終了後の新たな研究成果
ウニの味が餌料中のアミノ酸組成に大きく影響されることを明らかにし、海藻を粉末化した後、ある原料 (アミノ酸組成に特徴あり) を加えて固めた餌を与えれば、さらに味の良いウニに育つ可能性を見出した。
5 公表した主な特許・品種・論文
鵜沼辰哉. 雑海藻を原料とした水産無脊椎動物用餌料. 日本水産学会誌 84,148-148 (2018).
6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
北海道内の複数の漁協で、磯焼け漁場から痩せウニを集め、短期間養殖してから出荷する際に、餌料として生野菜を併用するようになった。他にも複数の漁協で導入を検討中。
(2) 実用化の達成要因
事業開始前からウニ漁業者や加工流通業者の聞き取り調査を行い、ウニ養殖に対する期待が高まっていることやウニ養殖を成功させる最重要課題の一つが餌料確保であることなど、現場のニーズを把握できていた。
(3) 今後の開発・普及目標
原料を雑海藻に限ると確保できる量に限界があるので、他の原料も利用して大量生産可能で良質なウニを育てることができる養殖用餌料 (配合飼料を想定) の開発を進める。
7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
生海藻の不足に悩んでいたウニ養殖において、餌料の安定確保が可能となり大幅な増産に繋がるうえ、磯焼け漁場から痩せウニを間引くことで藻場の回復にも貢献する。