生物系特定産業技術研究支援センター

(27004B) 北方圏紅藻類の資源開発とその健康機能・素材特性を活かした次世代型機能性食品の創出

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(発展融合ステージ)
実施期間 平成27~29年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
北海道大学、函館地域産業振興財団、北海道立総合研究機構、神奈川科学技術アカデミー
作成者 北海道大学産学・地域協働推進機構 木曽 良信

1 研究の背景

日本は世界に類を見ない海藻利用国で、特に昆布などの『褐藻類』が使われている。今回の研究では特に北方圏に育つ低利用資源の『紅藻類』に着目し、有用な機能性を示す食品の創出に取り組んだ。

2 研究の概要

本研究ではタンパク質含量の高い紅藻『ダルス』に焦点を当て、『生産システム』、『健康機能性』、『加工技術』について検討し、38品目の試作品を作製して社会実装を図った。

3 研究期間中の主要な成果

  • ダルスの繁殖特性を確認し、種苗の保存技術、育成条件など、養殖のための基礎技術を構築した。
  • ヒト介入試験において、女性における中性脂肪の低下作用を確認した。
  • ボイル塩蔵技術、乾燥技術、粉砕技術、発酵技術などを検討し、製品化のための基盤技術を構築した。その結果、試作品38品目を達成することが出来た。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 科学研究費助成事業 基盤研究(C)(2018~2020年度) に採択され、「パエニバチルス酵素による紅藻ダルス・キシロオリゴ糖の調製とその腸内菌叢改善作用」についての研究を実施している。
  • ノーステック財団 札幌ライフサイエンス産業活性化事業 (2019年度事業化支援補助金) に採択され「ダルス藻体を酵素処理することで、認知症予防・健康寿命延長に有効なフィコエリスリンペプチド・ルテイン・マイコスポリン様アミノ酸・キシロオリゴ糖を含有する新規食品素材の作製」について検討している。

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 特願2017-221665「血中コレステロールの改善剤及び血中コレステロールを改善するための食品組成物」(出願人 : 北海道大学、函館地域産業振興財団)
  • H.Kishimura, H.Yasui. et al. Complete sequence of mitochondrial DNA of red alga dulse Palmaria palmata (Linnaeus) Weber & Mohr in Japan, Mitochondrial DNA Part B, 4:2, 3177-3178, (2019).

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

加工処理条件を整理・検討し、企業へのサンプル提供を行い、13件が販売開始され、25件が商品化を検討している。

(2) 実用化の達成要因

函館エリアでは平成15年度より10年間都市エリア事業を行っており、研究機関と地域企業が連携して製品開発に取り組む環境が醸成されている。また地元企業が中心となり「海藻活用研究会」を立ち上げたり、地元レストランとのメニュー開発に取り組むなど、産官学連携が活発に行われている。

(3) 今後の開発・普及目標

ダルスは、昆布を養殖するロープに他の海藻とともに自生した藻体を収穫するため、仕分け作業が負担となり生産量が伸びていない。生産量を増やすためには本プロジェクトで開発した養殖の基礎技術を地元の理解を得て、漁場等で試行する。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

海藻は食物繊維が豊富であり、かつダルスは高タンパク含量であることから、国民の健康維持に寄与出来る。また、将来起こりうる食糧不足に備え、タンパク源としても有用である。

(27004B) 北方圏紅藻類の資源開発とその健康機能・素材特性を活かした次世代型機能性食品の創出